日常で感じたことをそのままにせず、言葉にして心の引き出しに入れておく。心身の不調には、自分なりの傾向と対策を持つ。そして、仕事で直面した課題をきっかけに、本や人から学んでいく。
今回は、社員から寄せられた3つの質問を通して、日々の経験を学びや成長につなげるために実践していることを語ります。
質問① 考えを言語化するために、普段どんなことをしていますか?
「私は言語化が得意ではなく、自分の考えや思いを言葉にするまでに時間がかかります。物事を考える時にも、頭の中では文字や文章というより、映像やイメージで考えていることが多く、それをうまく言葉にできません。
高橋さんは、考えを瞬時に言語化して発信されている印象です。普段、物事を考える時は、頭の中で文章や言葉として整理されているのでしょうか。それとも、イメージや映像から考えて、それを言葉に変換されているのでしょうか。
本を読んだり、インプットとアウトプットを重ねることで、言語化は鍛えられるものだと思っています。高橋さんが普段どのように考えを整理し、言葉にされているのか、とても興味があります」
僕は、やっぱり言語化に定評があるんでしょうね。
最近、僕自身も少し自信を持ててきています。
言語化について、僕がやっていることがあります。
感覚を言葉にするトレーニングです。
例えば、映画や漫画を見た時に「見ました」「楽しかったです」で終わらせない。
人に「面白かった」と伝えるなら、どうやって伝えようかなと考えます。
SNSをやっている人だったら、
それを言葉にして、最後にSNSへ投稿してもいいのかもしれません。
僕がなぜそこまで伝えようとするのかというと、
最初は多分、必要に迫られたからです。
このラジオもそうですし、月曜日の朝礼もそうです。
経営者の弟子に何かを伝えることも、部下に伝えることも、
取引先に会社の要望を伝えることもあります。
世間の方たちに、広報で何かを伝えることもあります。
『伝える』という活動が、とにかくたくさんあるんですよ。
だから、伝えなきゃいけない仕事をしているために鍛えられた、
という前提はあると思います。
今、僕は『ガス人間』を見ています。
まだ途中なので言語化できていないんですけど、面白いなと思いながら見ています。
その『ガス人間』の面白かったエピソードを、
もしかしたらどこかで使うかもしれないので、引き出しに入れておこうという感じです。
もう少し難しいことで言うと、メタファーとか例え話。
そういうものが上手な人って、話が上手だと思うんです。
僕も、そうありたいと思っています。
例えば「ガス人間のこういうところが面白かったんだけど、
これって今、目の前で起きていることにも共通するよね」という例え話を出したい。
だから、感想を心の中で言語化しておく。
言語化することによって、自分の心の中にしまっておける。
近い状況になった時に、
例え話として使えるようにしているというのはあるかもしれません。
常に伝える準備をしておくことが大事なのかなと思っています。
話す機会が少ない人は、友達に伝えるつもりで考えればいいと思います。
ご飯を食べて、おいしかった。
その感動を伝えようと思って、自分だったら友達に何と伝えるのかを考える。
実際に伝えなくてもいいと思うんですよ。
「友達に会ったら、こういうことを言いたいな」と思っておく。
そして、それを心の引き出しに入れておく。
ご飯を食べた時や、映画を見た時だけではなく、何でもいいんですよ。
例えば、今、手に持っているペットボトル。
今日、炭酸水を買ったんです。
トップバリュブランドの強炭酸水です。
お店で陳列されているのを見た時、
最初に思ったのは「ウィルキンソンないんかい」ということでした。
僕はウィルキンソンが好きなんですよ。
炭酸水って、セブン‐イレブンとかもそうなんですけど、
自社のプライベートブランドを作ったら、
その商品を置いて、他社の商品をあまり置かないようにしているんですよね。
僕はそれを見るたびに「ウィルキンソンないんだ」とがっかりするんですけど、
炭酸水を飲まないよりはいい。
結局、味はどこも一緒だよねと心の中で整理をつけて買っています。
実際に飲んでみると、味の違いはそんなに気にならないんです。
でも、買う時に少し躊躇している。
ウィルキンソンが20円高くても、僕はウィルキンソンを買います。
これがブランドの力だと思うんですよね。
誰かにブランドの話をしようと思った時に「ウィルキンソンの例えが使えるな」と、
自分に起きた出来事をストックしています。
これは、いわゆる「N1のインサイト」を言語化しているということだと思います。
自分という一人の人間が感じた、些細なことを言葉にしている。
みんな、自分の感想で生きているはずです。
だから、自分が感じたことを、ちゃんと言葉にしておく。
心の中で一度、言葉で考えておく。
それを癖にするといいのかもしれません。
質問② 成果を出し続けるために、意識していることは?
「高橋さんは、仕事量が多く大変な状況でも、心身ともに非常に丈夫で、立ち直りもとても早い印象があります。
以前から、ビジネスアスリートという考え方について社内でお話しされていたと思いますが、高い成果を長く出し続けるために、体調管理や精神面で意識していることはありますか?」
まず、先天的なものも絶対にあると思っています。
僕は幼稚園、小学校で皆勤賞でした。
もちろん、インフルエンザやおたふく風邪など、
学校に来てはいけない病気で休むことはありました。
でも、普通の風邪や寝坊で休んだことはないんですよ。
そもそも、風邪をひかないんです。
だから、最初から体が頑丈だったというのはあると思います。
その上で、体が強い理由として、習慣化していることがいくつかあります。
習慣① 7時間寝ることを自分に課している
体が強い理由として大きいのは、よく寝ることだと思います。
かなり早く寝て、早く起きています。
習慣② 心が疲れたらサウナに行く
そもそも、心の疲れは、人と人の間にしか起こらないと思っています。
これを知っているか、知らないかは結構大きいと思うんですよね。
大体のストレスは、人間関係の間にしか生じません。
仕事量が多くて大変ということは、実はそこまでストレスになっていない。
大体の悩みは、人と人の間の悩みです。
それが分かっていれば、
「今、自分はこの人のことですごく悩んでいるんだな」と認識できます。
そうすると、少し俯瞰して見られるんですよね。
俯瞰して見た上で、サウナに行って思考を止める。
考えないようにするというか、思考を止めるトレーニングもしています。
自分なりのリセット方法を持つことも大切です。
体調が悪くなった時の対処法もあります。
朝起きた時に気圧が乱れていると、頭が痛くなります。
でも、それはロキソニンを飲んだら治ると分かっているので、ロキソニンを飲みます。
たまに37.2度や37.3度ぐらいの微熱が出ることもあります。
その時は、お風呂に入って、服を10枚ぐらい重ね着して、
ポカリスエットをたくさん飲んで一晩寝れば、大体治ると分かっています。
さっきの言語化の話ともつながると思うんですけど、
「今、こういうことが起きている。なぜだろう」と考えるようにしています。
経験から学習しているということなのかもしれません。
「原因は気圧かな」「とりあえず薬を飲んでみよう」
「これは寝不足かな」と、一つひとつ検証していく。
その結果、大体のことは対処できるようになったというのはあります。
「何にストレスを感じているんだろう」と考えたら、「大体、人じゃないか」となる。
では、人によるストレスに、どう対処するのか。
相手に何かを言っても仕方がないから、忘れようとする。
大体、忘れるという結論になります。
「これだけは伝えておきたい」ということがあるなら、
それだけ伝えると決めて、あとは忘れる。
もちろん、ネガティブな伝え方はせず、
いい形で伝えなきゃいけないなと考えることはあります。
元から体が強いという前提はあると思いますけど、
自分の傾向を把握して、対策を考えることは意識していますね。
質問③ 起業当初は、どのようにインプットしていましたか?
「起業当初、今より若い頃の高橋さんが、どのようにインプットしていたのかお伺いしたいです。高橋さんは、ビジネスパーソンとしての守備範囲が非常に広いので、自分自身の今後の参考にしたいと思ったことが、質問した背景です。
・どのような目的でインプットしていたのか。
・どのような手段でインプットしていたのか。
例えば本の場合、課題ドリブンで選書していたのか、名著と呼ばれるものを片っ端から読んでいたのかなど、本の選び方についてもお伺いしたいです。
また、本や新聞、人との会話、動画など、当時行っていたインプットの手段を、できる限りすべて教えていただきたいです」
まず前提として、僕の守備範囲が広いというのはあると思います。
その理由は、全部自分でやっていたからです。
創業時から、営業をして、マーケティングをして、
データベースを構築して、カスタマーサポートをして、人をマネジメントしていました。
バックオフィスや経理、お金のことも全部見ていました。
その中で「これはやる必要がないのかな」
「僕がやらなきゃいけないのかな」ということは常に考えていました。
任せるものは任せていく。
でも、任せられる人がいなかったり、すごく難しいことだから自分でやろうと思ったり。
そういうことが一つひとつ血肉になっているから、守備範囲が広いんだと思います。
守備範囲の広さは、インプットの量ではありません。
チャレンジの量が多いから、守備範囲が広い。
これは前提として言いたいですね。
仕事の機会でしか、人は育たないと思うので、
いろいろなことに挑戦してきたから、何でもできるようになっているということです。
インプットの目的と手段についてですが、
課題があって、それを克服しなきゃいけないから本を読む。
基本的には、課題ドリブンで本を選びます。
「いい本ありますか」と言われても、
課題がなかったら、あまりいい本として楽しめないんですよね。
基本的には「自分はこれを知りたい」という課題から、本を選びにいっています。
本の選び方としては、自分で本屋さんに行って、
「この本、面白そうだな」と思うものを買うようにしています。
最近はAmazonで片っ端から買ってしまうこともありますが、
片っ端から買った時は、つまらない本は読まないと決めています。
僕は、いわゆる難しい本や、名著と言われているものも結構読みます。
本質が書かれている本を読みたくなる性質があるんですよね。
ただ、名著って、つまらないものも多いんです。
名著でも、読めない時は一度置きます。
僕も、読めない本はいっぱいあります。
コトラーの本とか、500ページぐらいある分厚い本は読めないです。
『21世紀の資本』も無理です。
挫折した本は、僕にもたくさんあります。
でも、レベルが上がると読めるようになるんですよ。
ドラッカーの本も、20代の時に買いましたけど、読めませんでした。
30代半ばぐらいになって、
ふと「またドラッカーを読まなきゃな」と思って手に取った時は、結構読めました。
20代の時に名著を読むのは、少し難しいと思います。
最初は、読みやすい本でいい。
本は、楽しく読めることが一番重要だと思います。
つまらなくなったら、読むのをやめる。
一冊を全部読む必要はないと思っています。
「今、この本を読んでいる時間に、学びを得られているか」ということを、
すごく大事にしています。
僕は後で読書メモをつけるので、本の右上を折ったりします。
30ページぐらい読んで、一度もページを折っていなかったら、
読むのをやめてしまうかもしれません。
「この本からは、今は学び取れないんだな」
「今の自分には、まだ読めないんだな」という感覚です。
後で、また楽しく読める時が来るかもしれません。
その時に読めばいいんじゃないかなと思っています。
本以外で言うと、僕は師匠の存在が大きいです。
師匠、上司、メンターですね。
毎年、経営者団体の中でメンターをお願いして、一人ついてもらっています。
そのメンターとの壁打ちは、僕の成長やインプットにおいて、すごく大きいです。
ほかの経営者仲間から影響や刺激を受けることもあります。
ある程度、管理職くらいになってきたら、
会社の外にも人間関係を作りにいった方がいいと言いますよね。
自分の専門領域に詳しい人たちとのネットワークを、自分から作りにいく。
社外に、学べる人がいる環境を作ることとも大事だと思います。
例えば、HR系の集まりに顔を出して、他社のHRを勉強するとか。
そういうことです。
僕は、人が集まる場所に行くと、大体ヒエラルキーができてくると思っています。
有名な会社の人の話を、みんなが聞きたがる法則みたいなものがあるんですよ。
そういう時に、僕はすごくむかつくんですよ。
「いつか、こいつを抜かしてやろう」と思います。
僕は、反骨心をストックしに行っているというか、
反骨心を磨きに行っているところもあります。
ライバルや敵を作る。
「いつか絶対にこいつを抜く」と決めて、日々頑張る。
ちゃんと頑張っていれば、自分も少しずつ求められる側になっていきます。
そこで自分の成長を感じながら、また新しい敵を作る。
そういうことを、ずっとやっている気がします。
人によって磨かれるということも、すごくありますね。
話し手
高橋 翼
株式会社アーラリンク代表取締役社長
2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。

