7つの質問から見えてきた、アーラリンクの経営観
社員から届いた7つの質問を通して、アーラリンクらしい経営の考え方が見えてきます。
iPhoneの転売を2ちゃんねるで知り、背面に「NOT FOR RESALE」と刻印した話。有料サポートを始めるか迷った末に、やらないと決めた理由。発想力、人材育成、読書後のワーク、そして「能力ではなく、伸び率で超えてほしい」という社員への本音まで。普段どんなことを考え、どう決断しているのかを語ります。
- 目次
- 質問① iPhoneの転売にどう気づいたのか
- 質問② 利益と投資、どこでバランスを取るか
- 質問③ カスタマーサポートの方向性
- 質問④ 発想力はどこから来るのか
- 質問⑤ 人材育成で大事にしていること
- 質問⑥ 本を読んだあとにワークをする理由
- 質問⑦ 社員の理想状態とは何か
質問① iPhoneの転売にどう気づいたのか
最近は社員のみんなからお便りが来るようになりました。
今回は、寄せてもらった7つの質問に答えていきます。
「転売されているっていうのは、どうやって気づいたのでしょうか」
僕らは、お客様のために安くスマホを出していました。
iPhone SE2を新規500円で出していたんですよね。
正直、これはちょっとやられるだろうなと思っていたところ、
やっぱり結構転売されていて…
腹が立ったので、転売対策を立てたんです。
iPhone SE2の背面ってガラスなんですけど、
そのガラスに「NOT FOR RESALE」と刻印するようにしたんです。
「転売のための販売じゃないですよ」という意味ですね。
ガラス刻印の機械を買って、自分たちで刻印しました。
この刻印は外せないです。
消しても取れないし、シンナーでも取れないです。
ガラスに傷を入れているような状態なので、転売市場だとジャンク扱いになると思います。
普通に使う分には全然問題ないんですけれどもね。
この対策については朝礼でも話しましたし、
Xでも発信したんですが、反響は賛否両論ありました。
転売は、2ちゃんねるで知りました。
僕はたまに2ちゃんねるで「誰でもスマホ」のエゴサーチをするようにしているんです。
それで人生で初めて、2ちゃんねるに書き込みました。
「教えていただきありがとうございました。このように刻印を入れさせていただきました。これで転売しにくくなっているのか、それとも全然これでも転売できるのか、僕には分からないので、これでも転売できるということであればぜひご報告ください。よろしくお願いいたします」
煽るようなことを丁寧に書いちゃっている感じですよね。
でも面白かったのはXで、
「誰でもスマホの名前や連絡先も入れてほしいです」
「本人の名前や、好きな言葉を刻印できるサービスにしてほしいです」
という声もあったんです。
これは逆にプラスに転じているなと思いました。
好きな文字を入れられるサービスって、ちょっと面白いですよね。
ちょっとやってみてもいいかもしれないなと思いました。
質問② 利益と投資、どこでバランスを取るか
「『本気を出せば数億円いける余力を残すために』があまり理解できなかったのでお聞きしたいです。出た利益を広告に回せば利益も見込めるが、伸び率を維持するためにやらないということでしょうか」
以前「僕らは売上よりも利益のほうに経営指標を変えますよ」
という話を朝礼でしたんです。
ただ、目指せる利益を100%目指してしまうと、
投資力がなくなってしまうんですよね。
だから「50%くらいの期待値で利益目標を決めて、その先は投資に回していく」
という話をしました。
いっぱい契約を取ったほうが、いっぱい利益が出るじゃないですか。
なので、この質問は「余力を残す意味が分からない」ということだと思います。
だったら余力って何ですか、ということですよね。
大事なのは、僕らのビジネスモデルが投資先行だということです。
広告費もかかりますし、スマホ本体の費用もかかります。
だから契約を取れば取るほど、利益は一時的に圧縮されちゃうんですよね。
もちろん、お客様が利用を続けてくれれば利益は出ます。
でも、お客様を獲得しなかったら、
事業活動の意味が分からなくなるじゃないですか。
僕らは、携帯を持っていない人に携帯を持ってもらうためにやっています。
これは利益のためだけではなくて、意義のためでもあるんです。
利益を残しすぎるようにしてしまうと、お客様の獲得ができなくなる。
逆に獲得に踏み込みすぎちゃうと、利益が残らなくなる。
「お客様獲得と利益のバランスをどこで取るか」
というのがこの質問の答えになりますね。
質問③ カスタマーサポートの方向性
「アーラリンクで費用対効果の低い代表的なものは、カスタマーサポートの人件費だと思っています。今後カスタマーサポートの方向性はどのように考えていくかを教えてください」
この質問を書いてくださった方とは、僕はまったく逆の考えをしています。
たしかに、カスタマーサポートが直接利益を生んでいるのかと言われると、
分かりにくいと思います。
テレアポのように売上に直結するものではないですから。
でも僕は、カスタマーサポートがしっかりしている会社が、
今後生き残るんじゃないかなというふうに思っています。
短期視点で見ると、カスタマーサポートの人件費は無駄に見えるかもしれません。
でもブランドの観点から言うと、むちゃくちゃ大事です。
なので、しばらくは有人対応をしていきたいと思っていますし、
それによってお客様が安心して使えると思っています。
最近、どの携帯会社もやっていることで、検討したことがあります。
お客様のお悩みを解決する操作案内を、有料にするかどうかです。
月額300円、400円くらいで、遠隔サポートのような形です。
コールセンターで使い方の操作案内をします。
Androidであれば、
こちらのパソコンからお客様のスマホと同期を取って動かすこともできます。
それで、お客様のお悩みを解決することを有料でやるかどうかです。
結論、僕は有料でやるのをやめました。
やりたいと思ったんですけど、一日考えてやっぱりやめようと思いました。
ここには、僕の思想がかなり出ていると思います。
有料にすれば、もちろん利益は取れます。
でも、お客様から電話があったときに、
無料のお客様と有料のお客様でグラデーションができてしまうじゃないですか。
無料のお客様だと対応が少し雑になったりとか、
「お金が払われていないから、ここまでしかやりませんよ」
となるのは、丁寧なカスタマーサポートのあるべき姿とは違うんじゃないかなと。
何の用事ならお金をいただいて、何の用事ならお金をいただかないのか。
その線引きもすごく難しいんです。
「お金が払われていないから、ここまでしか案内できません」
そう言われた側の印象って、あまり良くないと思うんですよね。
それに、一部有料にしてしまうと、組織の水準を維持するのが難しくなってしまう。
全部有料だったら、全部丁寧にやらなきゃいけない。
全部無料だったら、サービスの一環だからちゃんとやらなきゃいけない。
でも、有料のお客様と無料のお客様がいると、
そこに温度差が生まれちゃうんじゃないかと思っていて。
お客様によって、カスタマーサポートの丁寧さにグラデーションができてしまうと、
それは組織のバランスをおかしくしてしまうなと気がついたんです。
だから、他社ではやってますけど、我々はやらないという意思決定をしました。
無料のお客様に対するサービス品質を悪くしたくない。
それが、僕の考えです。
質問④ 発想力はどこから来るのか
「毎週月曜日、経営のお話をとても興味深く聞かせていただいておりますが、高橋さんの発想力は一体どこから来ているんだろうと常々思っています。発想力は今の自分の役割にも必要な要素だと思っているので、高橋さんの発想力を養う方法がありましたらお聞かせいただきたいです」
この手の質問は、よくいただきます。
「なんでそんなこと考えられるんですか」と言われることがあるのですが、
発想力については、3つあるかなと思っています。
①インプットの量が多いということ
読書をする。
ポッドキャストをいろいろ聞く。
他の社長の話を聞く。
そういったインプットが、結構多いんじゃないかなと思っています。
②インプットしたあとに、いっぱい考えること
全然違う事業の話を聞いたとしても、
「自分のところに置き換えたらどうなるんだろうな」と考えます。
そうすると「これ、やってみたいな」と思うことが出てきます。
もちろん、考えてやらないものもありますけど、
「考えた」ということが一旦自分の頭の中に残るんです。
それが大事なのかなと思っています。
③めちゃくちゃ挑戦すること
実際にやるということです。
やると、その結果が返ってくるじゃないですか。
「こういうふうにやったら、こういう結果になるんだな」と分かる。
そうすると、次に当てる施策の角度が良くなっていく。
挑戦しまくっていれば、結局どこかで当たりを引けると思うんです。
だから挑戦している量が多いんじゃないかな、というのはすごく思っています。
例え話を1つします。
ある上場している大きな会社の社長さんとご飯を食べさせてもらったとき、
その方がカスタマーサポートの話をしていました。
その会社にはコールセンターがあるそうです。
お客様からお電話をいただいて、そこから提案をして、新しい商品を受注していく。
どちらかというと、カスタマーサポートというよりは、
カスタマーサクセスのようなことをやっているコールセンターです。
そこで「公平性」をすごく大事にしていると話していました。
打率が良い、つまり営業の数字が良いカスタマーサクセスのスタッフに、
電話が優先的に割り当てられるようにしているそうです。
結果を出している人には、提案の機会が多く回る。
その会社では、そういう仕組みにしているんだと聞きました。
これって、僕らにも応用できるんじゃないかなと思ったんです。
今、アーラリンクでは、電話は均等に取れるようにしています。
1番から50番までオペレーターがいたら、均等に回るような形です。
でも、品質が高いオペレーターもいれば、
これからもっと成長していかなきゃいけないオペレーターもいます。
お客様の側に立ったとき、やっぱり品質の高い人に案内してもらいたいと思うんですよね。
そうすると、順番に鳴らすのではなくて、
品質が高い人が空いていたら、そちらを優先的に鳴らす。
そうしたほうが、お客様の満足度は高くなるんじゃないかなと思いました。
だから、これを僕らでも応用できないか、今調べてもらっているんですよ。
もしできるなら、やりたいなと思っています。
この話で言うと、
①全然違う会社の社長から、カスタマーサクセスの話を聞きました。
②話を聞いたあとに「僕らに何を応用できるかな」と考えました。
③考えた応用ができそうかどうかを調べて、できるなら挑戦してみようと思っています。
やった結果、うまくいくかもしれないし、失敗するかもしれない。
でも、その結果を1つ持つことで、自分の脳みそのシワが増える。
それが発想力につながっているんじゃないかなと思います。
あとは、ずっとそういうことを考えているというのもあると思います。
質問⑤ 人材育成で大事にしていること
「人材育成において最も重視される要素は何でしょうか。能力、成果、徳、自立性など様々あるかと思いますが、特に大切にされているものを教えていただきたいです」
人材育成において僕が大切にしていることは、僕の育成論だと思います。
ただ、質問の中に「能力、成果、徳、自立性」と書いてあります。
これは僕の育て方というより、
「どういう人を育てたいか」という話も入っているような気がしたんですよ。
人材育成において僕が重要視していることは、挑戦することです。
仕事の機会、新しい機会、挑戦ですね。
「じっくりゆっくりやろう」ではなくて「まず挑戦しよう」という考え方です。
教わってからできるようになろうではなくて、
最初にやってから、やり方を教わったり、調べたり、考えたりする。
まずやるってことを大事にしています。
やっぱり機会がないと成長しないというのは、絶対あると思います。
だから、無茶ぶりでもいいから、まず機会を任せることを一番意識しています。
新しい仕事をとにかく振るんです。
ただ、振るときに、さすがにこれはちょっときついかもしれないと思ったら、
僕なりの思考プロセスを質問形式にして渡してあげたりしますね。
僕なら最初にこれを考えるなと思ったら、
「これはどういうふうにやりますか」
「これはこうだと思うんだけど、どう考えますか」
といった形で、考えるプロセスを補助線として、
ワークシートのようなものを作って渡すこともあります。
でも、渡すときには、
「この仕事はあなたの責任だからね」
「あなたが責任者だよ」
「あなたがうまくいかなかったら、このミッションは失敗しますね」
という感じで渡します。
そのうえで、定期的に僕がフィードバックします。
このフィードバックも、人材育成では結構重要だと思うんですよ。
僕の能力以上に、部下は育たないと思っているので、
教える側の能力も、人材育成においてすごく大事です。
そうすると、僕がいっぱい勉強しないといけないんですよね。
会社全体としても、上司力を上げていかないと、
人材育成はうまく進んでいかないと思っています。
だから「上司力を上げるために何をするか」っていうのを、僕はずっと考えています。
そして、誰を育てたいのかという話で言うと、
僕が育てたいのは、真面目に一生懸命やる人です。
言われたフィードバックを素直に受け入れる人。
量を追える人。
言われた仕事に対して、たくさん向き合える人。
そういう人を育てたいと思っています。
僕は、自分で言うのもあれですけど、
人を育てるのは結構うまいんじゃないかなとなんとなく思ってますね。
成長したときに、
「なんで成長できたのか」
「なんでそれができるようになったのか」
自分の成功体験を言語化してもらうような質問も結構しますね。
質問⑥ 本を読んだあとにワークをする理由
「成長環境のために本を読むのを推奨するだけではなく、読んだ後にチームでワークする理由や狙いをお聞きしたいです」
これはすごく大事です。
本を読んで満足する人って、すごく多いんですよ。
でも、本を読んでから、その本に書いてあった内容を問いに変えて考える。
そこまでしないと、読んだものを明日活かせるようにはならないんです。
だからワークをするんです。
本当は、自分で本を読んで、自分で設問を立てて、自分でワークを解けばいいんです。
でも、設問能力ってすごく大事なんですよ。
多分、AI時代に一番大事ですよね。
いい設問を立てられるかどうか。
だから、設問は仕事ができる上司が、
「この本だったら、こういうことを考えてみるとあなたのためになると思いますよ」
というワークをセットして、それをチームで解く。
そうすると、その設問への答えを考える中で、本の内容がより深まって、
明日から使えるものになっていきます。
だから、本を読むだけじゃなくて、ワークを解くことが大事なんです。
「考えましょう」ということですね。
チームでワークをやっていると、メンバーが結束していくんです。
自分の思考を相手にちゃんと伝える場になるからです。
「あの人はこういうことを考えているんだな」と、
相手の考えを知れるってこともワークの副産物です。
だからワークは、やっていてすごく楽しいんですよね。
ただ、ワークはファシリテーターが超重要ですね。
ファシリテーターのビジネス能力によって、
そのワークがいいものになるのか、あまりいいワークにならないのかが決まります。
いい質問を立てられるかどうか。
それってこういうことだよね、と解釈できるか。
それも全部、ビジネス力にかかっています。
逆に言えば、ワークを回す機会を与えることによって、
そのワークを設計し、回す社員を育てようという狙いもあります。
ワークは、本を読む人のためだけではありません。
ワークを設計する人、回す人の成長機会にもなるんです。
質問⑦ 社員の理想状態とは何か
「社員の理想状態はどのようなものを考えていますか」
これは問いが広すぎて難しいです。
ただ、このとき僕は成長について朝礼で話していました。
「みんなの成長意欲や、成長を感じる状態について、
100点満点で言うと今は15点くらいだと思っている」
という話をしたんです。
だから、この質問は「100点満点中、15点ってどういう状態ですか」
ということなのかなと思いました。
僕はアーラリンクの中で一番年長者です。
そして、僕が一番仕事ができる気もしています。
もっと悲しいのは、成長意欲や成長曲線が、
若い人たちよりも僕のほうが伸びている気がしているんですよ。
そうすると、時間が経てば経つほど、
みんなとの距離が離れていくような感覚があります。
理想の状態で言うと、
能力は年月をかけて積み上がるものなので、すぐに埋まらないかもしれません。
でも、まずは「僕を超える」とか「僕より成長したい」とか、
そういう気持ちを持ってほしいです。
仕事ができる人にガンガン聞きに行く。
自分なりに量を追ってみる。
そういう姿勢があると嬉しいなと思いますね。
僕が期待しているのは、伸び率で超えてほしいということです。
たとえば、会社で月3冊くらいブックリーディングをするなら、
自分で1冊、2冊多く読んでみる。
1週間に1冊、本を読むことを自分に課してみるとか、
そういう量の追い方でもいいと思います。
あるいは、役職についている人に自分から話をしに行く。
「どういうふうに仕事をしたらもっと伸びますか」
「僕にフィードバックください」
とか、自分からドアノックしてきてくれたら、僕は嬉しいです。
そういう人をうまく活用してほしいんです。
それは、自分が成長したいからやることだと思います。
そういう姿勢を持ってやってほしいなと思ってますね。
話し手
高橋 翼
株式会社アーラリンク代表取締役社長
2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。

