濃い組織は、どうやってつくられるのか。
今回は「宗教」の仕組みをヒントに、組織づくりについて考えます。同じものを共有する、厳しい習慣を持つ、ルールをつくる、そして困難を物語に変えていくこと。
社員が増えても同じ方向を向き続けるために、組織には何が必要なのか。アーラリンクの今の組織づくりも交えながら話します。
濃い組織は、どうやってつくられるのか
最近、チームのブックリーディングをやっている中で、
「会社組織×宗教学」みたいな文脈で宗教について勉強していたんですよ。
僕は原則、濃い組織が好きだなと思っていて。
ちょっと捉え方は難しいですけど、カルトっぽいというか、
行き過ぎているくらいの組織の方が好きなんですよね。
じゃあ、そういう濃い組織はどうやってつくられるのか。
そんなことを考えていました。
僕が読んだ本には、
「宗教の本質は、反社会的なものにある」
「世の中の常識ではないことを掲げることが大切だ」
と書かれていました。
今の社会の問題点に対する新たな回答を掲げることで、
「自分たちはこういう集団だ」という輪郭が生まれる。
これは、前回話したアンチテーゼにもつながります。
じゃあ、実際にどういうものが組織の濃さにつながるのか。
宗教の仕組みをヒントに、いくつか考えてみました。
① 同じものを共有する
例えば宗教には、断食をするとか、
豚肉を食べないとか、お酒を飲まないとか、特殊な習慣があります。
周りの人がご飯を食べている中で、自分たちだけが食べない。
「私は今これを我慢している」という共通体験があると、
同じことをしている人同士の絆が強くなるらしいんですよ。
特殊な習慣を入れることで、
「私はこの集団の人間なんだ」と認識するようになる。
これは面白いですよね。
これを会社に応用するなら、
僕がこれからやりたいと思っているのが、自社株会です。
今は僕が100%持っている株を従業員も買えるようにする。
上場する、しないに関係なく、会社が成長して利益が出れば、
自分が持っている株式の価値も上がっていく。
会社の業績が良くなることと、自分の資産形成がつながるわけですよね。
みんなが株を持っていたら、
「この会社の価値を一緒に上げていこう」
という連帯感も生まれるんじゃないかなと思っています。
もちろん、自社株じゃなくてもいいと思うんです。
社員証だったり、会社のバッジだったり、ストラップだったり。
みんなが同じものを身につけていることで、
「私たちはこういう集団だよね」と認識できる。
あとは、自社の商品を使うこともそうですよね。
僕らだったら、社員みんなが「誰でもスマホ」を使う。
同じサービスを使っていれば、
通信が遅い時に「今ちょっと遅いよね」と共有できるし、
商品の悪いところにもすぐ気づける。
実利もあるんですけど、
結果的に「みんな同じものを使っている」ということ自体が、
絆を強くすることにもつながると思うんですよね。
同じものを持つ、使う、見る。
形は違っても「自分たちは同じものを共有している」という感覚が、
その集団の共通言語になる。
そうした共通言語が増えるほど、
「自分たちは同じものを見ている」という感覚も強くなる。
推し活とかもそうですよね。
推しそのものだけじゃなくて、
同じものが好きな仲間とつながることまで含めて、
体験価値になっているんだと思います。
② 厳しい習慣を持つ
もう一つ、組織の「血を濃くする」という話で面白かったのが、
「不安を煽る、そして解決策を提示する。そうすると人がついてくる」
という考え方です。
でも僕は、結構近いことをやっているんです。
僕は社員に、「今の仕事はむちゃくちゃ大変にする。
その代わり、5年後、10年後にみんなが幸せになるように設計している」
という話をよくします。
AIが出てきたり、日本の将来が不安だと言われたりする中で、
先のことを心配するよりも、まず自分の能力を信じられるようになろうと。
そのために、今は厳しい時間の使い方をしようと。
今感じている不安に対して、
「自分の能力を高める」という解決策を提示しているわけですよね。
今の大変さを乗り越えていけば、
将来は自分の能力を心配しなくてもよくなる。
「厳しい習慣をギフトします」という考え方です。
人間って、5年後、10年後を考えるのが苦手なので、
目の前の楽な環境に没入しやすい。
だから、将来のために今あえて厳しい習慣を持つという考え方が、
どこまで刺さるのかは分からないですけどね。
宗教の戒律も、あまりにお手軽だと、
「本当にこれで大丈夫なのか」と信じにくいらしいんです。
でも、それが厳しければ厳しいほど、
「ここまでやっているんだから、自分は大丈夫だ」と自分の成功を信じられる。
僕自身も、週70時間、月300時間働くということを勝手に自分に課しています。
それだけやっていれば、他の経営者より成長できる、成功できると思える。
「この習慣は絶対に自分を裏切らない」と自分に自信を持てるんですよね。
社員にも、よく読書のデータを見せます。
社会人の多くはほとんど本を読んでいない。
その中で月1冊読むだけでも上位に入る。
うちの会社だと月2冊くらい読む人もいるし、一番読む人は週2冊読んでいます。
週2冊読んでいたら、もうかなり上位ですよね。
それだけ自分に努力を課していると、
「ここまでやっているなら、自分はやれるんじゃないか」と思える。
能力だけじゃなく、
「これだけのプロセスをやり切っている」という事実が、
自分を信じる理由になるんだと思います。
③ 行動規範やルールをつくる
うちの会社でやっていることで言うと、行動規範もすごく大事だと思っています。
宗教の話で面白かったのが、
「人は、自分で選んで入った環境であれば、そこの権威に従いたい」という話です。
小さい頃から、ある程度は権威に従うように教育されている。
そして、自由よりも「道がある方が楽」なんですよね。
何もかも自分で考えなくていいからです。
なので、行動規範とかルールが決まっているのはすごく良くて。
この会社では、このルールに従っていれば少なくとも怒られない。
むしろ、ちゃんとやれば「ありがとう」と評価される。
そのルールに従っていれば会社も成長するし、
自分自身もうまくいくと信じられれば、
「自分はこれをやっていればいいんだ」と思える。
いちいち「何をしたらいいんだろう」
「こういう時どうしよう」と難しいことを考えなくて済む。
宗教に戒律があるのも同じで、
「これはしてはいけない」と決まっていれば、迷った時にすぐ判断できる。
そもそも宗教って、人を幸せにするために存在しているらしいんですよね。
会社も同じで、社員が迷わず行動できるようにルールや決まりがある。
それに従っていれば、自分の人生も良くなるし、
会社もうまくいくと信じられる。
そう思える状態をつくることで会社への安心感が生まれて、
社員同士の連帯感も深まっていく。
つまり、「こうやれば大丈夫」という仕組みをつくることが大事なんですよね。
その仕組みに沿って動ければ、毎回ゼロから考える必要がなくなる。
働く人に余計な負荷をかけず、ストレスを減らすことにもつながる。
結局、経営でよく言われる「仕組み化」や「ルール化」も、
考え方としてはここにつながっているのかもしれません。
④ 困難を組織の物語にする
もう一つ、組織が大きくなった時に勉強になったのが、
「ちゃんと迫害される」という話です。
僕が読んだ『宗教の作り方』という本には、
「新興宗教は大きくなればなるほど迫害される」と書かれていました。
有名になれば、必ずアンチが増える。
だから「迫害されるのは、大きくなった証拠だと思いましょう」と。
それでも恐れずに伝え続け、活動し続けることが、
その組織の物語につながっていく。
実際、組織が大きくなれば、批判する人も出てくるし、
アンチコメントも増える。
ライバルが現れたり、規制されたり、いろいろな戦いも起きる。
でも、その一つひとつを乗り越えた経験が、
やがてその組織らしさになっていく。
今ある困難も、
未来に組織の血をさらに濃くするためのプロセスだと考えられるんですよね。
そして、その物語を後から聞いた新しい人が、
「この組織、かっこいいな」と思う。
そうやってまた組織が強くなっていくんでしょうね。
⑤ 組織の真ん中に、信じられるものを置く
宗教という概念から、勉強させられることが多くて。
社員が100人、200人と増えていくと、
何かしらの方針や、みんなが共有できるものをつくらないと、
意識がバラバラになっていくと思うんです。
宗教には、神様だったり十字架だったり、偶像崇拝の対象があります。
うちの会社には、そういうものがまだあまりない。
もしかしたら、それが「誰でもスマホ」というサービスなのかもしれません。
何か信じられるものを真ん中に置かないと、
みんなの意識がバラバラになっちゃうかもしれない。
宗教って、人が大きな集団をつくる仕組みの本質に近いと思うんですよね。
人間がこれだけ大きな集団をつくれるのも、
宗教や神様のような「みんなで同じものを信じる」という力があるからだ、
という話があります。
会社も同じで、みんなが信じられるものを中心に置くことで、
人数が増えても同じ方向を向きやすくなるのかもしれません。
僕らもまだまだですけど、
みんなが同じ方向を向けるものをこれからもっとつくっていきたいと思っています。
話し手
高橋 翼
株式会社アーラリンク代表取締役社長
2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。

