バイアスを、信頼に変えるために

「誰でもスマホだからしょうがない」
そう思われてしまうのは、サービスの実態ではなく“バイアス”かもしれない。
機種変更、支払い体験、ブランド、不信感、第一印象。人がどうサービスを知覚し、どう信頼するのか。行動心理学や経済心理学を学びながら、“誰でもスマホ”が信頼されるサービスになるために今考えていることを語ります。

朝礼で届いた社員の声

今日は私が朝礼で喋ったことに対して、
社員のみんなからもらった質疑応答や感想をいくつか抜粋して、
お話ししようかなと思います。

アーラリンクでは全社で朝礼をやっているんですよ。

大阪の社員もいるのでオンラインなんですけど、
必ず質疑応答とか感想も入れています。

今回は10件以上来てましたね。
なので「社員のみんなはこういう感想を寄せていましたよ」
っていう話をすると面白いかなと思っています。

端末への不満が解約につながる

まず、機種についての話をしました。

これはお客様イベントに参加して、
お客様から言われたことで私が感じたことなんですけど、
「機種の切れ目が縁の切れ目になる」と。

携帯電話業界では当たり前かもしれないですけど、
やっぱり機種変更の時とかにお客様がMNPしちゃう
っていうのがあるんじゃないかなと思っています。

社員からの感想でも、
端末に関する満足度の低下で解約を受け承ったという話がありました。

機種変更を提案したんだけれども、端末が高くて買えない。
端末が不満で、そのままサービスもやめると。

こういう話がありました。

これが一番胸が痛いんですけど、
端末の不具合とかがあった時に、
お客様から「誰でもスマホだからしょうがない」とか、
「自分がブラックで他社で買えないのを見越して粗悪な機種を売ってるのか」
みたいなことを言われちゃうって話があって…

これは非常に良くないと思っています。

だから、長く使ったお客様が、
安く機種を変えられるような仕組みを作らなきゃいけない
なと思っています。

信頼残高を貯める仕組み

これは実際に今動いています。

まだ本当に水面下で動いているような形なんですけど、
お客様が長く使えば使うほど、
内部のポイントというか、
信頼残高みたいなものが貯まるような形にしたいんです。

その信頼残高がいっぱい貯まっていれば、機種の値引きがもらえるみたいな。
そういう設計をしています。

ただ、ここの設計がかなり壮大なんですよね。
システム面とか含めて、
かなりちゃんとやっていかなきゃいけないなと思っています。

利用体験の中にゲーミフィケーションを入れていきたいんですよ。

請求をちゃんと認識してもらうために

イメージとしては、例えば僕らで言うと、
携帯電話の代金をお客様に支払ってほしいわけです。

その時に、なんで支払いができなくなっちゃうのか。

これはお金がないからではなくて、
その請求をちゃんと認識できていないから
じゃないかなって。

請求をちゃんと認識してもらうためには、
プラットフォームに定期的にアクセスすることが大事だと思っています。

例えばネットバンクとかで、自分の銀行の残高がいくらあるとか、
クレカだったら今月いくら使っているとか、
それを見ると自分のキャッシュポジションみたいなものが分かるじゃないですか。

それと同じで、僕らのマイページを見て、
いつ引き落とされるからいくら用意しておかなきゃいけない、
みたいなことを理解する必要がある。

そうすると、
マイページに対する接触頻度を上げるみたいな話になってくるんですよ。

でもこれって、いろんな事業者が、
自分のページにもっと頻繁にアクセスしてほしいと思っている話と一緒なんですよね。

だから、たくさんアクセスしたくなるような工夫をつけなきゃいけない。

ドラッグストアとかだったら、
毎日ログインしたら、
ログインボーナスで1ポイントもらえるとかあると思うんですけど、
ああいうようなものの積み重ねでやっていくと。

お客様の体験自体を構築するということは今までやってなかったんですけど、
ちゃんと設計して、頻繁にアクセスしてもらう。

頻繁にアクセスすることによって、
お客様は自分で料金を認識して、払ってもらえるようになる。

もっと言うと、支払いに怯えないようになる。

支払いに怯えない状態へ

請求が払えるか払えないか心配だとか、また請求が来たとか、
その請求に対するすごい嫌な思いを、
お客様は多分みんな持っていらっしゃると思うんです。

リスタートするっていうのは、
私はちゃんと支払い、「収入ー支出=0以上」であること
だと思っています。

しかも、毎回支払いに怯えずに、
ちゃんと支払いを計画的に自分でコントロールしているような状況に
なることが大事
だと思っています。

だから、誰でもスマホの利用習慣の中で、
支払いというものに慣れていくというか。

そういうことが大事なんじゃないかなと。

そういうような教材というか、教育コンテンツとして、
利用体験を一気にブラッシュアップしていこうかなと思っていて、
それを今めちゃくちゃ考えています。

ちょっとヒントを出すと、
行動心理学とか経済心理学をめちゃくちゃ今勉強しているんですよ。

勉強すると、本当にウェブページの些細なことに対して、
すごく人間の心理をうまく使っているようなものが、
世の中にいっぱいあるんですよね。

このゲーミフィケーションは、年内にできたらいいかなっていうレベルです。

「誰でもスマホだから」というバイアス

もう1個あった話で、
お客様から言われている「誰でもスマホだからしょうがない」とか、
「自分がブラックで他社で買えないのを見越して粗悪な機種を売っている」
みたいな話。

これは本当にまずい。

実態として、ちゃんといいものを出しているというのは、
働いている社員のみんなは分かるんです。

ただ、やっぱり「誰でもスマホ」という名前を背負っている十字架があります

普通は携帯の審査ってちゃんとやらなきゃいけない。
それなのに誰でもできるということは、何かあるんじゃないかという不信感。

これはもう人間のバイアスなので、
人間を相手に商売をしている以上、これは防げない。

だから我々は、10万ユーザーを皮切りに、
もっとサービスの品質を上げていかなきゃいけないんじゃないかなと思っています。

仕入れ機種の基準とか、
情報をもっとお客様に伝わるようにオープンにした方がいいんじゃないかとか。

あと機種の保証期間も今は1ヶ月とかでやっているんですけど、
その期間が本当に適切なのかとか。

1個1個のサービスのクオリティをもっと上げていかないと、
ブランドとして大きくなれない
なと思っています。

ブランドは「知覚」を巡る戦い

最近、ブランドの勉強もすごいしています。

ブランドって、知覚を巡る戦いであると。

商品ではないんですよね。
その商品を見て何を感じたか。

1人1人の消費者の意識やマインドで知覚していることがブランドであると。
これがすごい大事です。

例えばAppleです。

パソコンならAppleに対するブランドイメージって、
スタイリッシュで、絶対使いやすくて、いいものを作ってくれている。

このブランドがあることによって何が起こるかというと、
時間を買っているんですよね。

Appleというブランドを全面的に信頼しているからこそ、
パソコンを買ったり携帯を買ったりする時に、
悩むということを捨ててAppleを買う。

これがブランドです。

悩む時間とか選択の時間を削って、
ブランドに対する信頼感でベットしている。

本当に商品の機能だけで突き詰めていくと、
実はAppleが全部一番ではないかもしれない。

けれども、我々が知覚しているのは、
Appleの商品に対する絶対的な信頼感なんですよね。

だから結局、ブランドってどのように知覚されるかってのが重要なんです。

一度ついた知覚は変わらない

誰でもスマホも、これからもっともっと成長していく時に、
「誰でもスマホだからしょうがないよね」
「あの会社は粗悪なものを扱っているよね」

というふうにユーザーに知覚されてしまうと、
これからの成長にとって非常にマイナスであると。

もっと言うと、1回知覚してしまうと、人の知覚は塗り替わらないんですよ。

ユーザー体験をしないと変わらないと思っていて。

携帯電話業界で言えば、ソフトバンクと楽天の話があります。

ソフトバンクは昔、電波がすごい悪かったです。
ボーダフォンの時とか、山じゃ入らない、
地下じゃ入らないって散々言われていました。

だけど今は、ソフトバンクの電波に対してああだこうだ言う人はかなり減っている。

実際に投資をしまくって、電波を立てまくって、電波が良くなった。

だから実際に使った人は、
「結構つながるね」と知覚が上書きされているんです。

一方で楽天は、電波が悪いという印象が未だにある。

携帯電話キャリアのシェアで見ると楽天は4%なので、大半の人は使っていない。

使っていないから、ずっとその印象が上書きされていなくて、
ずっと「電波が悪い会社である」と思っている。

実際にはショップも増えていて、
カスタマーサポートにも力を入れようとしている。

でも、使っていないと印象が変わらない。

最初に勢いよく参入した時に電波が悪かったというところを、
人々はずっと第一印象として知覚してしまっている。

だから、誰でもスマホだからしょうがないという知覚が根付いてしまうと、
それを書き換えるマーケティングコストがむちゃくちゃかかってしまう。

だからこそ、今からちゃんとした
商品・サービスを提供していかなきゃいけないんじゃないかとすごく思っている。

早くやらないと手遅れになってしまう、
非常に緊張感がある話だと思っています。

バイアスと向き合っていく

もう1個、知覚の話で言うと、
誰でもスマホへの不信感みたいな話があります。

ある時、対応してくれたオペレーターが、
「厚生労働省と一緒に制度を作った」とか、
「法務省から表彰をいただいている」といったことをお客様に伝えたんです。

すると、お客様がすごい手のひらを返して、
ちゃんと信頼していただけたという話がありました。

これもバイアス。確証バイアスかなと思っています。

大きいところから表彰されている会社はいい会社である、
みたいなふうに人は思うということ
ですね。

でも、別に僕らのサービスは何も変わっていないじゃないですか。

ただ、法務省から表彰されているんですと言ったら、
「あ、そうなんですね」と態度がガラリと変わる。

サービス実態は何も変わっていないんだけれども、
印象によって、お客様が怒っている状態が解消されたという話です。

人間って、合理的ではなくて非合理的な意思決定をしているんですよね。

すごい感情の生き物であるんだなと、
印象とかブランドを考える上で、最近すごく注目しています。

だから「誰でもスマホだから何かおかしいよね」
というのも確証バイアス
じゃないですか。

そういったバイアスとかと、一生向き合っていかなきゃいけない。

だったら逆に、バイアス返しで、バイアスをうまく使っていこうと、
私はすごく思ってますね。

なんでそういうふうに思われちゃうのかな
っていうメカニズムを徹底的に研究していく。

そして、そのメカニズムを研究するとともに、
自分たちがそれをうまく活用するところまで考えて
やっていかないといけないんじゃないかなと思って、
今、経済心理学とか行動心理学を猛勉強してます。

話し手

高橋 翼

株式会社アーラリンク代表取締役社長

2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。