#69 会社を伸ばしながら、人を育てる
会社の成長と、部下の成長。この二つは別々のものではありません。事業を前に進めるために仕事を任せ、本人を「魂の責任者」にする。その過程で人は成長していく一方、任せるだけでは育たない難しさもあります。社員から届いた質問や感想に答えながら、人を育てることへの考えと、社員への期待を語ります。
質問① 会社の成長と部下の成長は、別々ではない
前回に引き続き、社員のみんなから届いた質問に答えていきます。
朝礼の内容に限らず「もう何でもかんでも質問してください」と伝えたところ、
ちょこちょこと質問が入ってきました。
「高橋さんは、経営に加えて多くの部下を抱えている中で、会社の成長と部下の成長にどれくらい時間を割かれていますか?普段、業務の時間をどのように使っているのか気になりました。」
僕には、直属の部下が9人います。
会社の成長と部下の成長にどれくらいの時間を割かれているかと聞かれたら、
圧倒的に会社の成長です。
時間で言うと、7割くらいは会社の成長に使っているんじゃないかなと思います。
やっぱり、事業を推進することに多くの時間を割いています。
ただ、会社の成長と部下の成長が完全に別々になっているわけではありません。
僕一人の出力だけでは、事業を前に進めるための力が足りなくなります。
だから、部下のみんなに仕事を任せます。
機会を渡して、その機会に対してフィードバックをしながら成長してもらう、
というやり方を取っています。
つまり、部下の成長と事業の推進は、僕の中では結構同一線上にあるんですよね。
会社の成長のために使っている7割の時間の中にも、
部下と一緒に仕事を進めたり、仕事を任せたり、
フィードバックをしたりする時間が含まれています。
あとは1on1をしたり、
気になったことをその場でフィードバックしたりする時間もあります。
ただ、それだけにものすごく多くの時間を使っている感覚はありません。
質問② 仕事を任せ、『魂の責任者』にする
もう一つ、先ほどの質問と延長線上にあるような質問をもらいました。
「機会を与えれば成長するわけではない、との感覚を得たということですが、そう思われた決定的なエピソードがあれば教えてほしいです。自分が成長しようと思ったときの反面教師にしたいです。」
僕は「魂の責任者」という言葉が結構好きなんです。
要は、仕事を任せるときに、
「この領域を担当しているのは、あなたですよね」という状態をつくります。
僕も口は出しますが、良いものをつくるのも、良いものをつくらないのも、
「基本的にはその人がハンドルを持ってるよね」
っていう環境を作ることが大事だと思っています。
悪い言い方をすると、結構投げるんです。
「これをやっておいてね」とポイッと渡します。
ただし、仕事がきちんと進んでいなければ、その人が魂の責任者です。
自分がやらなければならないと、おのずと感じられる環境をつくっています。
これが、僕が「機会を与えれば成長する」と考えている前提です。
では「機会を与えれば、必ず成長するわけではない」と感じたのは、
どのようなときだったのか。
これは、人を成長させることについて考えたときに、結構感じました。
部下の育成は、育てた側と評価する側で認識が違うことがあるので、
すごく難しいです。
例えば、社長から「この人を育ててほしい」と言われたとします。
育成を任された上司は、自分なりにその人を育てます。
任せられる仕事が増えてきたら「育ってきたな」と感じるかもしれません。
でも、社長から見ると、
「それは育成したことにならないよね」と感じることがあります。
なぜ、そういうズレが起きるのか。
部下の育成がうまくいっていないと、
この仕事が進まないとか、そういう状態になかなかなっていないからだと思います。
事業はある程度仕組み的に回るし、
上司がプレイングマネージャーとして、部下の仕事を手伝ってしまうこともあります。
こうした状況では、育成が決定的にできていないとは判断されにくいんですよね。
部下の教育は、魂の責任者になりにくいです。
部下が十分にできていなければ、結局は上司がカバーしなければなりません。
品質が低くても、一応仕事をしたことになってしまう場合もあります。
教育の魂の責任者として取り組んでいるつもりでも、
期待を超えるような成果がなかなか出てこないことがあります。
本人は「責任を持ってできている」と思っていても、
ほかの人から見ると物足りない。
そういうことが、結構起こりがちなんじゃないかなと思います。
結局、上司は自分の持っている物差しでしか、部下の成長を測れません。
だから、人の成長には時間がかかるんですよね。
部下を育てようとしても、結局は上司自身の範囲でしか、
その人を伸ばせないところがあります。
これは、ある意味ではどうしようもない部分です。
「上司としての姿勢」や「マネージャーとしてのあるべき姿」「模範」
といった言葉を僕はよく使います。
ただ、こういう言葉は、めちゃくちゃ抽象的じゃないですか?
抽象的で、なかなか言語化しにくいからこそ、
そうした能力を身につけるには、ものすごく時間がかかります。
教育を任せたからといって、その人がすぐに教育者として成長するわけではありません。
誰かを育てる中で、
自分自身もビジネスパーソンとしてスケールアップしていかなければならない。
この話は分かる人には伝わるけれど、
まだ経験していない人にはなかなか伝わらない、本当に難しい話だと思います。
感想① 成長率で、僕を超えてほしい
先週、ある社員と一緒に仕事をしていたときに、
「高橋さんよりも仕事ができるようになりたいです」と言われました。
こういうことを言われたのは、たぶん2年ぶり、2回目くらいです。
それくらい少ないです。
僕はすぐに、
「じゃあ、僕より仕事ができるようになるまで、アーラリンクを辞めちゃ駄目ですよ」
と伝えました。
シンプルに、すごく嬉しかったんですよね。
その出来事を受けて、
僕は朝礼で社員のみんなにメッセージを送り、最後にこう書きました。
「僕が一番会社の中でおじさんなのに、みんなと能力の差が開くばかりで寂しいです。ずっと孤高です。能力で追いつけなくても、成長率は超えてもらえたら嬉しいなあと願っています。」
今回、そのメッセージに対して、社員からこんな感想ももらいました。
「最後のメッセージを見て、とても気合いが入りました。まずは成長率で高橋さんに勝てるように精進します。」
僕は、アーラリンクの中で一番おじさんなんです。
40歳で、僕より年上の社員はいません。
それなのに、僕が一番いろいろなことに挑戦しています。
時間の使い方を見ても、僕より成長に狂っている人は、なかなか見当たりません。
だから「この社員に追いつかれそうだな」とか、
「自分の能力を抜かされそうだな」と感じたことがほとんどないんです。
それが、すごく寂しいんですよね。
一番おじさんの僕が、一番成長しているんじゃないか。
そんな感覚があります。
僕とみんなとの能力差が、開いていくばかりなんです。
能力で今すぐ追いつけなくても、成長率では僕に追いついてほしい。
できれば、超えてほしいと思っています。
成長環境のシンボルでありたい
よく「リーダーは孤独を受け入れなければならない」と言われます。
ただ「孤独」という言葉を、
はぶられているみたいなふうに受け止めてしまうと、苦しくなってしまいます。
僕が考えるリーダーの孤独は、「孤高」に近いものです。
一人で、高い場所にいるということです。
でも、成長率は追いついてくれてもいいんじゃないのかなと思うんですよ。
若い人のほうが伸びしろはあるはずじゃないですか?
僕は、アーラリンクを成長環境にしたいと思っています。
そして、その成長環境のシンボルが、僕でありたいと思っています。
僕自身が常に「成長したい」という思いを持ち、それをみんなに見せ続ける。
そうすることで、社員のみんなにも
「この会社にいれば成長できるんだ」と感じてもらいたいんです。
だから、僕が成長し続けること自体は良いんですけど、寂しいなとは思いますね。
「このペースで成長していけば、5年後、10年後には僕に追いつかれるんじゃないか」
そんなふうに僕に思わせてくれる人が出てきたら、嬉しいです。
そしたら僕も負けず嫌いなので、
「絶対に負けないぞ」というつもりで、さらに成長します。
話し手
高橋 翼
株式会社アーラリンク代表取締役社長
2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。

