「普通はこうだけど、自分たちはこうする」
今回は『アンチテーゼ』をテーマに、アーラリンクらしさについて話します。
誰でもスマホの審査、カスタマーファースト、長く使うほど安くなる仕組み、これから考えている携帯ショップの話まで。「普通はこうする」にあえて乗らない、一見すると不合理な選択が、なぜ自分たちらしさやブランドの強さにつながるのかを考えます。

アンチテーゼが「自分たちらしさ」をつくる

今日は『アンチテーゼ』の話をします。

「普通の人はこうなんだけど、私はこうしています」
それがある種、ブランドの価値、自分たちの価値を際立たせると思うんです。

僕らで言うと「誰でもスマホ」は、世の中のアンチテーゼだと思っています。

世の中では、携帯電話の契約には厳格な審査というものがあって、
審査っていうものは、ある種冷たさみたいなものもあると思うんです。
でも僕らは、誰でも受け入れる中で、
困っている方のリスタートを一緒に助けていく。

では、なぜそれをやっているのか。
その理由の中に「自分たちらしさ」みたいなものが込められているんです。

例えば僕らで言うと「めっちゃ働こうぜ」とかもそうですよね。

僕は、若い人たちが成長するために、
めちゃめちゃ働ける環境を用意しなければいけないという宿命を感じているんですよ。

ただ、若い人たちに成長する環境を提供しなきゃいけないから、
仕事はタフで難しくしなきゃいけない。
これは世の中の会社に対するアンチテーゼですよね。

「アーラリンクってそういう会社だよね」
というものを際立たせるということなのかなと思っています。

カスタマーファーストを貫くということ

カスタマーファーストも、
ちょっとアンチテーゼっぽくなってきているのかなと最近思っています。

カスタマーファーストって、少し前までは当たり前だったと思うんですよ。

でも今は『カスタマーハラスメント』という言葉もあって、
「カスタマーって本当に一番なの?」みたいな話もある。

ただ一方で、働いている側の「従業員ファースト」が強くなってきたことと、
カスタマーハラスメントという言葉が広がったことには、
少し相関性もあるのかなと思ったりするんですよね。

「お客様が一番だとすると、従業員は二番以下なのか」
それって今の時代には逆行しているようにも見える。

でも僕は、顧客創造活動が一番大事だと常に言っています。

まず「お客様に価値を届けて、お客様をつくらなきゃいけない」
それが事業の目的だとした時に、
カスタマーファーストという姿勢も、結構アンチテーゼなのかなと。

サービスを追求していたらアンチテーゼだった。
自分らしさを追求していたら、アンチテーゼだったんですね。

アンチテーゼって、一見世の中に逆行していますけど、
どちらかというと狭い共感を生んでいるんじゃないですかね。

人と違う活動っていうのが、
自分たちらしさなんじゃないかなと最近思っています。

自分たちのブランドって何なのかと考える時に、
「他の人たちはこうなんだけど、僕らはこうだよね」というものが、
ブランドの魅力とかブランドらしさになるのかなと。

アンチテーゼには物語が必要

例えば、これから僕らがやろうとしていることで言うと、
お客様が携帯を長く使えば使うほど安くなる仕組みを検討し始めています。

これもまたアンチテーゼなんですよ。

世の中の携帯会社って、長く使えば使うほど安くなる会社は、
よくよく調べるとほとんどないんですよね。

最初は安いんですよ。
乗り換えの時とか、家族割とか。

獲得する時には全力を出すけど、
長く使っている人に優遇するというのは、携帯電話業界ではあまりない。

みんな現状維持バイアスがあるから、
わざわざ携帯会社を変えるのは面倒くさい。

だったら「長く使っている人をわざわざ優遇する経済的なメリットって何なの?」
という話になりますよね。

多分、どの携帯会社も散々考えてきたテーマだと思います。

でも「他の人がやらないからこそやる」という物語はすごくいいと思うんですよ。

僕らの場合、他社で審査が難しかったお客様が来ているので、
「自分たちのサービスを長く使う」つまりちゃんと支払いを続けること自体が、
その方の信頼の証明になる。

そして「信頼が証明されたら、自分にいいことがあるよ」
という体験価値をつくることができる、という物語ですよね。

だから僕らは、このアンチテーゼをやるに値するというか、
やる意味があると思っています。

ただアンチテーゼをつくればいいわけではなくて、
お客様にとって意味があるアンチテーゼで、
その背景に物語がないと意味がないと思うんですよね。

メルカリのアンチテーゼは、Webを捨ててスマホ一本に絞ったことだと思います。

メルカリより前にあったフリマサービスは、
スマホ版とWeb版の両方をやっていたんですよね。

でもメルカリは、一番後発だった中でWebを完全に捨てて、スマホ一本に絞った。

さらに、先にフリマをやっていた会社は上場していたこともあって、
マーケティング予算を思い切って使いにくかった。
一方でメルカリは、最初は上場していなかったので、
資金調達をしてテレビCMを一気に打った。

それで最初のユーザーを獲得していったという話を聞いたことがあります。

あと、面白いのが、メルカリのCMって、
購入者じゃなく出品者向けになっているんですよね。

例えば、家で使わなくなったたこ焼き器が、
ゴミではなく資産に変わるという体験を大事にしている。

メルカリは、出品してくれる人が増えるとうまくいくビジネスモデルなので、
とにかく出品者を増やすために広告をしているんですよね。

やっぱり市場の中でオンリーワンになると強いですよね。
まさに僕が目指しているところも、そこです。

だから、自分たちのアンチテーゼがどこにあるのかを察知することって、
結構大事だと思っています。

誰もやっていない携帯ショップをつくる

僕が次に狙いたいアンチテーゼで言うと、スマホショップもそうなんですよ。

世の中のキャリアショップって、販売代理店なんですよね。
直営ではなくて、フランチャイズでやっている。

そうすると、
獲得件数に対して、ショットのインセンティブをもらって商売が成立するので、
どうしても新規契約の方にウェイトが置かれる。

アフターサービスみたいなところは、
あまりお金にならないような設計になっている。

スマホの操作を教えるとか、LINEのアカウント設定をするとか、
「これは1,000円です」「これをやる場合は何千円です」
とメニューが細かく分かれていて、役務提供の範囲を明確にしている。

もちろん、役務提供者側からしたら当たり前なのかもしれません。

ただ、お客様が求めているのって、
「分からないことがありすぎるから、いろんなことをフランクに聞きたい」とか、
「なんなら全部やってほしい」「全部教えてほしい」だと思うんですよね。

サービスだから「これはここまでですよ」と区切ることと、
そういうお客様のニーズって、すごく相性が悪いと思っていて。

何でも無料でちゃんと教えてあげる、丁寧な携帯屋さんみたいなものって、
今の世の中のメカニズムでは成立しにくいんですよ。

だから、僕がもし携帯ショップをやるとしたら、自分で直営で出していきたい。

一店舗ずつ出店するスピードはめちゃくちゃ遅いけど、社員が直接やる。

契約者もそうだし、契約しない人にも、
スマホの使い方を丁寧に分かりやすく教える。
ちゃんと教わったお客様が、
自然と「ここで契約したい」と思ってもらえるような会社にする。

これは結構ポジションが空いているというか、
誰もやっていないことだと思っています。

僕らのお客様には、
「スマホをちゃんと丁寧に教えてほしい」というニーズもめちゃくちゃあるので、
そういうところは狙えるのかなと思っています。

これもアンチテーゼだし、めちゃくちゃ不合理ですよね。

「便利な機能がない」ことも価値になる

最後にもう一つ、携帯電話の話で言いたいアンチテーゼが、キャリア決済です。

僕は、キャリア決済を含めた「Buy Now, Pay Later」は、
マジで危険だなと思っているんですよ。

クレジットカードとかキャリア決済、後払いですよね。
自分の手元にないお金を使っちゃう仕組みです。

例えば、現金で寄付する時は100円なのに、
タッチ決済で寄付すると500円くらい払ってしまう、
みたいな実証実験があるんですよね。

見えないお金だから、お金を使っている感覚が薄くなる。

僕自身もいつもPayPayを使っていて、
昼を食べに行く時もPayPayが使えるところしか入らないくらいなんですけど、
一周回って、賢い人って現金派なんじゃねえかと思い始めています。

現金を下ろす時に330円手数料がかかったとしても、
現金で払うことで「これ、いらないや」
と抑制される金額の方が大きいんじゃないかと思うんですよ。

僕らはキャリア決済が機能的にできないんですよ。

今までは「できない」というハンデのようにも見えたんですけど、
一周回って考えると、機能が乏しいということではなくて、
金融ブラックの人が増えてしまっていることや、
よく分からないままポチポチ買って後で大変になることに対する
アンチテーゼにもできるんじゃないかと思い始めています。

もはや「その機能がないことの方が賢いんじゃないの」と。

便利で使えるものをあえてなくすことで、
「実はそれってちょっと賢いんですよね」と言えるのも、
一つのアンチテーゼなのかなと思っています。

クレジットカードとかキャリア決済って、
後から引き落としが来るのも結構心配じゃないですか。

「ちゃんと落ちるかな」とか考えて、脳みそのシェアが奪われる。
マインドシェアみたいなものですよね。

そうすると、本来楽しめるものも楽しめなくなったり、
心配が募って、考えたいことを考えられなくなったりすることもあると思うんです。

だから「Buy Now, Pay Later」から歯を食いしばって離れていくというのも、
最近はアンチテーゼなんじゃないかなと思っています。

話し手

高橋 翼

株式会社アーラリンク代表取締役社長

2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。