一次情報を取る力が組織を変える

「今回はアーラリンクの“AIとの共創”にフォーカス」

音声での対話、事業への活用、日報による内省、そして思考の継承。ただのツールではなく、パートナーとしてのAIとどう向き合うか。その実践と試行錯誤から見えてきた「問いを立てる」人間の役割と、共に考えるAIとの未来の働き方について語ります。

佐賀のAI合宿で、自分をリセットしてみた話

最近、自分のAIキャッチアップが遅れていることに焦りを感じていました。
そんなときに、経営者グループで流れてきた合宿の案内を見て「これは行くしかないな」と感じ、参加を決めました。

場所は佐賀で、しかもファスティング付き。ご飯を食べずに頭を空っぽにし、最新のAIに集中するという内容でした。
初対面の経営者たちとの交流や初めてのファスティング、これまで深く学んでこなかったAIについて向き合う時間は、自分にとって大きな意味を持つものとなりました。

頭すっきりどころか「飯食いたい」で埋まる40時間

ファスティングには「頭が冴える」といった効果があると聞いており、正直少し期待していました。ただ実際には、頭の中は「飯を食べたい」という思いでいっぱいで、まったく冴える感覚はありませんでした。金曜の夜に最後の食事をとり、次に食べたのは日曜の昼。約40時間の空腹でした。

それでも、だらだらと作業には集中できました。眠くならなかったことが理由かもしれません。作業効率は思ったほど悪くはなく、ただし幸福度は大きく下がっていました。

改めて「食べることのありがたさ」に気づかされました。

オートファジーとサーチュイン遺伝子に出会ってから

この合宿中「オートファジー」や「サーチュイン遺伝子」という概念を知る機会がありました。

一定の時間、食事をとらないことで細胞が自らを掃除し、老化の進行が遅れるという話でした。
これを知り「これは取り入れてみよう」と思い、現在では夜ご飯を最後にして16時間空け、昼に食事をとる生活に切り替えました。

僕は、ケトン体じゃ動けないんだなって思った

ファスティング中、ブドウ糖が枯渇すると「ケトン体」という物質をエネルギーとして脳が働くようになるといいます。
ただ、僕はそのケトン体ではうまく機能しないタイプだと実感しました。頭がまわらず「これは合わない」と感じました。

甘いものが好きなこともあり、僕の脳はブドウ糖を前提に動いていると再認識し、僕の体との向き合い方を見直すきっかけになりました。

ChatGPTとの会話が、ただのツールじゃなくなった

もう一つ大きな気づきは、AIとのやりとりを文字ではなく音声に切り替えたことでした。
これまではキーボード入力でしたが、あるときから話しかけるようにしました。

「これはこう思うけど、どう思う?」と問いかけると、音声で返ってきて、それを聞きながら再び考えて話す。
その繰り返しの中で、自分の思考が自然と深まっていく感覚がありました。

タイピングから会話に変えるだけで、これほど感覚が変わるとは思いませんでした。

事業の壁打ちは“食わせた”AIとやると変わる

事業についてAIに相談することもありますが、ただ質問しても表面的な回答しか返ってこないことが多いです。そこで、事前に自分たちの会社のことや「誰でもスマホ」の分析資料を作ってAIに情報を伝えておくんです。

あらかじめ伝えた上で、3Cや4Pといった分析フレームで整理しておくようにしました。
その結果「この事業の特性を踏まえると、こういう打ち手が考えられます」といった、納得感のある返答が得られるようになりました。

事前の準備が、精度に直結するということを強く実感しました。

AIに日報を話すようになって、内省の質が変わった

日報を書くことに負担を感じることもありますが、最近はAIに話しかけながら記録をとっています。
「今日はこんなことがあって、こう感じた」と話すと「それはなぜですか?」と返ってきます。その問いに答えていくうちに、自然と考えが整理されていきます。
もはや報告というよりも、内省の時間です。

「あなたは私の内面の鏡です」とプロンプト設定していて、頼れるパートナーとして機能しています。

社内にもAI文化をつくるためにやってること

社内にもAIを浸透させたくて、週に1度「AIミーティング」を実施しています。
「こんな使い方をしてみた」「これはうまくいかなかった」など、経験を持ち寄って共有しています。

活用レベルには差があるものの、少しずつ文化として根づいてきている実感があります。
AIは、やはり使ってみて初めて分かることが多いため、まずは試すことが何より重要だと思っています。

AIは“思考の継承”もできるって気づいた

育てたAIって、ある意味で自分の思考が詰まってるんですよ。

それを他の人に渡すと、その人も同じ視点で考えられるようになる。
「このAI、僕がずっと壁打ちしてきたやつなんだけど、使ってみて」って渡すだけで、これまでの思考や学びが引き継がれていく。

ゼロから教えるより圧倒的に早いし、何より的確なんです。
これからの知識共有って、こういう形になるんじゃないかなって思ってます。

AIと考える時代に、人間に残されたこと

AIの進化によって、壁打ちや内省といった行為も可能になってきましたが「問いを立てる」ことは依然として人間にしかできません。

「これって本当に正しいのか?」「何か違和感がある」といった感覚を持つことが、人間の役割なのだと感じています。
育てたAIとともに思考する時代においても、最初の火種は常に自分たちが持たなければならない。

だからこそ、AIと共創していくためには、人間側が明確な問いを持つこと。それが今後の働き方において、より一層重要になってくると感じています。

話し手

高橋 翼

株式会社アーラリンク代表取締役社長

2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。