カスタマーサポートは人間を鍛える現場。─“寄り添い”が価値になる最前線
AI化が進む中で、改めて向き合ったのは、CSという仕事の価値だった。新卒をあえてCSに配属し、人間性が鍛えられる“成長の入口”として再定義。丁寧さや寄り添いを徹底し、偏差値70レベルの品質を求めることで、組織全体の基準が一気に上がり始めたという。「基準は下げた瞬間に崩れる」──高橋氏が語るのは、CSを起点に会社の文化が変わっていくプロセスだった。
- 目次
- 「聞いてます」って言われてビビった話
- カスタマーサポートは“最後に残る仕事”だと思ってる
- 僕が“電話番号を消さない理由”
- 新卒をCSの入口にしている理由
- 「厳しくすると辞めちゃう問題」にどう向き合ったか
- 90点以上のCS品質を目指す理由
- 「CSだから」は僕の中で完全に禁止ワード
- 僕はたぶん、ずっと諦めてなかった
- 基準は“上に置き続ける”しかない
- 目線を引き上げるのはリーダーの役割
- 組織はリーダー以上には伸びない
「聞いてます」って言われてビビった話
お取引先の人から急に「ラジオ聞いてます」って言われて、びっくりしました。
普通にミーティングしてただけなんですけど、「ブックリーディングどうやってやってるんですか?」って聞かれて、え、ここで聞いてくれてる人いるんだ…ってめちゃくちゃ嬉しかったんですよね。なんかやる気がでました。
カスタマーサポートは“最後に残る仕事”だと思ってる
僕、ここ最近、自分の考えがガラッと変わった感覚があって。
カスタマーサポートってすごい大事だと思っていて、AIに置き換えられる仕事のランキングで1位とか言われてますけど、いやいや、最後に残るのは絶対ここじゃないですか?
人と人が“気持ちで話す”ところって、機械じゃ無理なんですよ。医療従事者の方と同じで、めちゃくちゃ人間的な仕事なんですよね。
僕が“電話番号を消さない理由”
問い合わせしたら、「チャットだけ送られてくる」「リンクだけ送られてくる」とか反対なんですよ。だからうちは、ホームページの一番上に電話番号を置いているんですけど、「気合入ってますね」って褒められました。
もう化石みたいな仕様かもしれないけど、ユーザー目線で言ったら絶対必要なんですよ。
新卒をCSの入口にしている理由
うちはカスタマーサポートを新卒の登竜門にしてます。なんでかと言うと、ここが一番“人間が磨かれる場所”だからです。
丁寧さ、寄り添い、相手の知識レベルに合わせるペース感。こういうのってマジで人間性そのものなんですよ。だから評価基準もつくっていて、「これ突破したら次のステップね」っていう仕組みも整えました。
そうしたらフロアの空気が一気に変わるんですよ。社員比率が増えて、ストレッチが効くようになる。“鍛える仕組み”が自然発生するんです。
「厳しくすると辞めちゃう問題」にどう向き合ったか
これ、オペレーション組織あるあるなんですけど、厳しくすると辞めちゃう問題。
本当は高い基準でやってほしいけど、辞められると困るから言えない。結果、基準を下げてしまう。
でも、新卒を入口にして“成長環境をつくる”って視点に変えた瞬間に、厳しさを当たり前に求められるようになったんですよ。
90点以上のCS品質を目指す理由
いまうちは『1時間に7.5件の応対+品質90点以上』を求めてます。
昔なら絶対に求められなかった基準です。「そんなの無理です」って返される未来しか見えなかった。でも、今は違うんですよ。
働く人が変わると、求める基準も変わる。これがほんとに面白いんですよね。
「CSだから」は僕の中で完全に禁止ワード
昔は「CSなんで…」「CSだからこれはできません」みたいな免罪符みたいなものがある文化があったんです。でも、いまは完全に消しました。
むしろ“新卒が最初に入る場所だからこそ、一番厳しいほうがいい”。そのほうが絶対に組織が強くなるんですよ。
僕はたぶん、ずっと諦めてなかった
「CSだから仕方ない」って言われるのだけは、昔からめちゃくちゃ嫌でした。
厳しくすると退職者が出て「高橋さんはCSを差別してる」みたいに言われた時期もあります。でも僕は、ほんとにフラットに厳しくしてただけなんです。
厳しさを受け入れられる人が入ってきたことで、ようやく理想に組織が追いついてきた感じがします。
基準は“上に置き続ける”しかない
基準って、一回下げると一気に崩れるんですよ。ほんと、びっくりするくらい崩れる。
だから僕は「基準は上に置き続ける」って決めてます。
複雑にしないで、「あれもこれもしょうがないよね」って言わないで、ここが基準なんだよって明確にする。
そうすると不満も減るし、「なんであの人は許されてるの?」みたいな話もなくなります。
目線を引き上げるのはリーダーの役割
ただ、これは難しいんですよ。
採用が大変だったり、できない状態が続いたりすると、基準を下に合わせたくなる。
だから、自分が現場に降りて、基準を引き上げるしかない。
キングダムでいう“覚醒の役割”ってやつです。人任せにしちゃダメなんですよね。
組織はリーダー以上には伸びない
これ、すごく思ってるんですけど、組織ってリーダー以上には絶対伸びない。
だから、リーダーが上限なんです。リーダーが基準を決める。周りが求めてなくても、自分で「僕はこうしたいんだ」と決める。
それが組織の文化をつくるんですよね。
話し手
高橋 翼
株式会社アーラリンク代表取締役社長
2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。

