【“正解がない問い”に対して、自分のスタンスを持つ ─「リーダーの仮面」を被る覚悟
今だけを見るのではなく、未来の姿を基準にミッションを置くこと。その中で寄り添いすぎの危険性、部下に与える“利益”を語れなければならない理由、緊張感をつくる重要性など、リーダーという役割に必要な視点を次々と掘り下げます。孤独を越えて“孤高”へ進む感覚、問い続けてスタンスを固める姿勢など、実践者だから語れる言葉が詰まっています。
- 目次
- 第2章:位置─リーダーは未来を見る存在
- 今だけの話しかしないリーダーはしんどい
- お願いはNG。リーダーは依頼の仕方が命
- 寄り添いすぎる危険性
- キャパは本人が申告する責任がある
- リーダーの抱える寂しさ
- 孤独を超えて“孤高”へ
- 第3章:部下が得ている“利益”を語れるか
- リーダーは緊張感を演出する役割
- 第4章:プロセスではなく“結果”で評価する
- エキストラワーク:休職したいと言われたら
- 問いに対して自分の答えを持つ重要性
- “問いを立て続ける”ということ
- 長期で走り続けるための土台づくり
第2章:位置─リーダーは未来を見る存在
本には「リーダーは未来を見る存在だ」と書いてあって、これは本当に本質だと思ってます。大事なのは“今どうするか”より、“未来の姿から逆算して何を任せるか”なんですよね。
実際に、今すごく来てほしい学生がいて、その子は将来アーラリンクの採用責任者までいけると思ってます。だからミッションとして「今の就活で悩んだことを全部メモしておいてほしい」と伝えました。いつか後輩を支えるときに絶対役立つからです。「あなたは僕が会ってきた学生の中で一番採用したい人材です」とも伝えています。これが未来から逆算したミッションの渡し方だと思ってます。
今だけの話しかしないリーダーはしんどい
「今できてないよね」だけ言うリーダーって、誰にとっても本当にしんどいんですよ。大事なのは「どんな未来に行くために、今これが必要なのか」を示すことなんです。
特に会社が厳しいときほど、社長やミドルは未来への道筋を見せないといけないのに、部下側に寄りすぎて「うちの会社おかしくね?」なんて言っちゃう人もいる。でもそれをやると組織は一気に壊れます。
アーラリンクはクレイジーソーシャルベンチャーを掲げてるので、まずリーダー自身が“クレイジーを理解し、噛み砕いて、ノーマル化できる力”を持つ必要があるんです。
お願いはNG。リーダーは依頼の仕方が命
部下に仕事を依頼するとき「お願い」はNGです。「これやってもらっていい?」っていう“お伺い”はリーダーとしてのスタンスを崩します。
最初はめちゃくちゃ言ってました。「これお願いできますか?」って。でも今は言わないようにしてます。「これを〇日までにやってください」。ただそれだけです。心理的ハードルはあるけど、この差は本当に大きい。
みんな“お願いベース”でコミュニケーションしがちなので、ここは徹底して直していきたいポイントです。
寄り添いすぎる危険性
「寄り添い」は本当に難しくて、寄り添いすぎると“褒め”が常態化して、褒められないと動けない状態をつくってしまうんですよね。僕自身も褒められると調子に乗るし、褒められないと「なんで?」って思ってしまうタイプなのでよく分かります。
だから寄り添いすぎは逆効果で、実は部下が求めているのは“寄り添い”より“成長”なんじゃないかと思ってます。リーダーが勝手に寄り添いを求められていると妄想してしまうので、そこに自分のヒロイズムを乗せないようにしないといけないんですよね。
キャパは本人が申告する責任がある
そして「忙しそうだから任せない方がいい」という勝手な判断も危険です。確かに配慮は必要だけど、限界を伝えるのは本人の責任です。リーダーは成長させる責任があり、部下は自分の限界をアラートする責任がある。この両輪が揃って初めて組織は前に進めると思っています。
リーダーの抱える寂しさ
リーダーはどれくらい寂しさを抱えているか? 僕は最初からずっと感じています。ただ、この寂しさは“孤独”を乗り越えて“孤高”に変わっていく感覚があって、最近はあまり寂しさを感じなくなりました。
仲良くしすぎない、誰かとベタベタしない、飲みに行ってモチベーションコントロールしない。リーダーとしての距離感は意識してます。ここを間違えると組織的に詰むので。
孤独を超えて“孤高”へ
リーダーの寂しさって、最初は本当にしんどいんですけど、続けていくと“寂しさそのものを俯瞰できる状態”に変わっていくんですよね。僕自身、最近は寂しさを感じる前に「まあ、そういうもんだよね」と処理できるようになってます。
これは感情と立場を切り離せるようになる感覚で、部下の感情に引っ張られず、必要な距離感を保ちながら自分のスタンスを貫けるようになる段階です。リーダーは最終的にここまで来ないといけないと思ってます。今の僕の寂しさレベルはほぼ0ですね。
第3章:部下が得ている“利益”を語れるか
「利益」というテーマは本当に重要で、部下は“どの上司につくか”で得られる機会や成長スピードが大きく変わります。いわゆる「上司ガチャ」ですね。だからこそ、自分がリーダーとして部下にどんな利益を与えられているのか、具体的に語れないといけないんです。
僕なら「この機会を通して、こういう関わり方をして、こう成長している」と説明できます。これは本当に部下を見ていないと答えられません。このワークの本質は“今日の答え”じゃなくて、1年後にどれだけ成長した答えを出せるかなんですよね。
リーダーは緊張感を演出する役割
緊張感と恐怖の演出」はリーダーにとって本当に大事なんですよね。人は放っておくと必ず緩むので、「ここはやるべきだよ」と明確に示せるかどうかが腕だと思ってます。
今日も研修ミーティングを飛ばした部下に対して「絶対そこは怒れよ」と上司に伝えたんですが、「LINEで叱りました」みたいな軽いやり方では緊張感は生まれないんです。
リーダーは“何が守られるべきで、何が許されないのか”をはっきり示さないといけないと思ってます。
第4章:プロセスではなく“結果”で評価する
次のテーマは「結果」です。ここはもうビジネスの原理原則で、努力は大事だけど、少年ジャンプの“友情・努力・勝利”でビジネスに残るのは“勝利=結果”だけなんですよね。努力は結果に変わって初めて意味を持ちます。
だからこそ「結果で見る」という考え方を徹底して持っています。
エキストラワーク:休職したいと言われたら
最後のテーマがエキストラワークで、「部下が『休職したい。みんな楽しそうだし私も休もうかな』と言ったらどう伝えるか?」というものです。
休むこと自体は悪くないし必要な場合もあるけれど、“楽そうだから休む”という発想はキャリアに大きく影響します。休職歴を評価で見ている会社は普通にあるし、上司として体力が弱ければ周りに迷惑がかかることもある。
こうした世の中のリアルをきちんと伝えられるかどうかが、リーダーの力量なんですよね。単なる慰めではなく、構造を教えるキャリア教育そのものだと思ってます。
問いに対して自分の答えを持つ重要性
そして本当に大事なのは、“正解がない問い”に対して、自分のスタンスを持つということ。
僕が答えを言ったからといって、それが正解ではない。
「僕はこう考える。だからこう行動する」
この軸がリーダーには必要だし、ワークの目的はそこにあります。
“問いを立て続ける”ということ
僕は毎週、このワークに60分×2コマの時間を使っています。めちゃくちゃ忙しいんですけど、「教育に時間を使う」という意思は絶対に捨てないと決めています。リーダーが育たないと会社は伸びないし、そのために動けるのは僕自身だからです。
問いを立て、考え、言語化して伝える。この繰り返しによって自分のスタンスがぶれなくなり、感情に流されず原理原則で判断できるようになります。僕自身、確実に成長している実感があります。
リーダーって、本当に忙しいのに、人にも構わないといけない。この矛盾がしんどい部分。だからこそ僕は“何を捨ててもリーダー教育は続ける”と決めています。短期的には非効率でも、長期的には組織の土台になると信じてます。
長期で走り続けるための土台づくり
会社を長く続けていくには、とにかく“土台”が必要なんですよね。
例えばメンバー個々の能力、仕組み、カルチャー、評価基準、役割の分解……全部が積み重なって初めて会社は前に進む。
その“土台づくり”に本気にならないと、リーダーって続かないんです。
だから僕はこの問いの時間を“超重要タスク”として扱ってます。忙しいから後回しにするんじゃなくて、「忙しいけどやる」。これがリーダーの覚悟じゃないですか。
話し手
高橋 翼
株式会社アーラリンク代表取締役社長
2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。

