#46 今の上司についていくと自分は成長できると思えますか?―部下を幸せにする。それが上司の仕事だ―

部下の笑顔を守るために、上司は何を背負うのか。「この上司についていくと、自分は成長できると思えますか?」砂糖のように甘い上司は、居心地がいい。でも、その甘さは成長を鈍らせる。部下を本当に幸せにするのは、どんな上司なのかを語ります。

上司は部下の人生を良くする責任がある

上司は部下の人生を良くしなければならない思想を強く持っているんです。だから目標を壁に貼る話もしてきました。上司はそれを見て、順調か不調かをちゃんと把握して、もし不調だったら「悪い評価をつけなきゃいけない」これは僕が絶対に譲らないところです。

伝えるのは気まずいけど、それを避けてたら上司としての役割を果たせない。だからこそ、部下と一緒に頑張ろうぜって伝えられる世界を理想としています。 

写真付きの目標がつくる“責任感”

サイバーエージェントの真似なんですけど、目標を貼るときに社員の写真も添えてるんです。文字だけの目標よりも、笑顔の写真と一緒にあると、上司が「この笑顔を作るために自分が頑張らなきゃ」って思えるんですよ。

全員の顔写真を貼って「今月はこれをやります」って書いてある。笑顔が見える目標って、文字だけの目標に比べて30倍位ひっ迫さが違います。

“甘い上司”は砂糖と同じ

「砂糖のように甘い上司はダメだ」ってよく言うんです。砂糖って甘いけど、体には悪い側面があります。

優しい上司もそれと同じで、その瞬間は居心地がいいけど、長い目で見たら部下は成長しない。いざ独り立ちした時に苦労するんですよ。だから厳しくても丁寧に伴走してくれる上司が必要だと思ってます。

どんな会社でも活躍できる自分でいたいなら、今の上司が厳しく教えてくれなきゃいけないと思うんです。

理想のチームは1対4の関係

僕の理想は1人の上司に対して4人の部下。プレイングマネージャーならそれぐらいが限界かな。もしプレイングを完全に外せるなら7人までは見れると思う。

でも5人、6人になったら中間層を作る必要がある。つまりピラミッド構造が必要なんですよ。人が10人くらいにならないと階層は作れない。

だから事業を伸ばして10人規模の組織を作ることが先で、そこから初めて人事制度を設計できる。組織って規模に応じて考え方が違うんですよ。

上司に求めるのは「真摯さ」

上司に求められるコンピテンシーって、僕は「真摯さ」だと思ってます。自分の利益よりも、会社やチーム、お客さんの利益をちゃんと考えられる上司じゃないといけない。

ドラッカーも言ってるけど、真摯さが大切。論功行賞のときも、その人が何を大事にしてるか、思想や価値観を自分の物差しにあて、真摯と思うかをすごく重要視しています。

思想を鍛える“上司力トレーニング”

上司育成のためにうちではブックリーディングをやっています。本を読んで終わりではなく、内容をもとにワークショップを行うんです。

僕が本を渡すのは知識を詰め込むだけじゃなく、自分の思想や考え方を交えて語ってほしいから。そうやって言葉にしていくことでしか、本当の上司力は磨かれないと思っています。

上司力は総合力で、特効薬なんてないですからね。

「この上司についていけば成長できるか?」

うちは360°評価をやっていて、グッとくる設問があるんです。

「今の上司についていくと自分は成長できると思えますか?」っていう質問。上司としてふるまっていても、部下からそう思われてなかったら、もうぐさっとくる。もし自分が「成長させてもらえると思えない」と思われてたら、どうしようもなく辛いです。

サーベイが映す“現実”

360°評価は人事評価とは別に運用してるんです。優しいつもりで、実は“砂糖のように甘い上司”になってることってあるじゃないですか。

だから「今の上司についていくと自分は成長できると思えますか?」っていう質問も部下にする会社です。それは、上司のミッションとして部下を成長させなければいけない。だから、部下を成長させるには総合的に勉強しなければいけないという事です。

上司の“苦しみ”を設計する

僕は、上司が苦しむ構造をあえて作るようにしてます。部下の目標が達成できなければ、評価を下げる面談をしなきゃいけない。伝えたくないけど、避けられない。

その苦しみがあるから、上司は本気で部下の成果に向き合える。だからうちの仕組みでは、「部下の笑顔のために上司が苦しむ」構造を意図的に作っています。

話し手

高橋 翼

株式会社アーラリンク代表取締役社長

2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。