組織の価値観|個人と組織をつなぐ「人格」のスイッチ

「個人人格と組織人格は分けて考えていい」

高橋さんが語る、“働く自分”と“個人の自分”を切り分ける発想。会社の価値観に従う「組織人格」と、自分らしさを大切にする「個人人格」を分けることで組織の中で求められる役割を果たしやすくなる。
顧客創造活動を最優先に据える企業で、心の切り替えがなぜ必要なのかを深く掘り下げます。

顧客創造活動こそが僕らの出発点

会社の価値観って、あるものだと思ってるんですよ。作るというより、もともとそこに存在してるというか。それを改めて言語化してみようっていうのが今回のテーマです。

今、新卒採用をしていて、「どういう価値観の人と働きたいか」っていう話になったんですけど、そこで思ったんですよね。アーラリンクとしての価値観、思想って、ちゃんとあるなって。

一番大事にしているのは「顧客創造活動が最も大切な目的である」っていうことです。これがすべての出発点だと思ってます。

「早い・安い・うまい」は最高の顧客価値

「早い・安い・うまい」って吉野家のスローガン、あれってめちゃくちゃクレイジーだなって思うんですよ。だって、早くて、安くて、うまいって、普通に考えたら無理ゲーじゃないですか?

でも、それを実現してる。これってまさに顧客創造活動だと思ってて、ああいうのを本気でやるって、めちゃくちゃかっこいいし、尊敬するんですよ。僕らも、そういうことを大切にしたいって思ってます。

あのフレーズ「早い・安い・うまい」って、イノベーションですよ。だって、それを現実に提供してるってすごくないですか?ああいうのをちゃんとやるためには、裏で働く人たちのオペレーションが超高精度じゃないと無理なんです。

自分軸を超えて、外に向く組織でありたい

正直に言うと、僕だって本当は自分のペースでご飯作りたいです。時間をかけて、自分が「うまい」と思えるものを作って、値段もそれなりにつけて。でも、それって全部“自分軸”なんですよね。内向きというか。

でも僕らが目指したいのは、その逆です。お客さんが「早い」「安い」「うまい」と感じてくれるものを届けること。そこに全力を注ぎたいと思ってます。

だからこそ、「組織は手段である」っていう価値観も持っています。会社が主語になってはいけない。「うちの会社がこうしたい」じゃなくて、「お客さんが何を望んでいるか」を出発点にする。それが、僕らのあり方なんです。

内向きの会社もある。でも僕らは違う

もちろん、世の中には「居心地のよさ」を大事にする会社もあるし、それはそれで素晴らしいと思います。でも、僕らはそうじゃない。

内向きじゃなくて、すごく外向きな会社でありたいんですよね。だから、成長スピードも求められるし、緊張感もある。
僕は、そういう“外にエネルギーを出してる感じ”を大切にしたいんです。

僕らが大切にしてる“違いの受容”

働く上で「自分と違う価値観を一旦飲み込んで、やってみる」って大事だと思ってるんですよ。相手が何を言いたいのか、どんな背景でその言葉が出てきたのか、ちゃんと考える。

その上で「とりあえず一回やってみよう」っていう姿勢が、僕らの中でのオペレーションの強さに繋がってるんじゃないかなって。意見の違いはあって当然。でも、まずやってみる。それが僕らの基本なんです。

組織人格は“プロとしての自分”

僕の会社では「組織人格」って言葉をよく使います。個人的な性格や価値観とは別に、仕事をする上での“振る舞い方”を決める考え方です。僕、家では掃除全然しないですけど(笑)、会社では綺麗にしておきたいんですよ。そういう切り替えが「組織人格」です。完璧な人はいないけど、お客さんは“完璧”を求めてくる。だから、ちゃんと組織人格を持って働くって、僕にとってはすごく大事なことなんです。

“人格の切り替え”で、もっと楽に働ける

「俺は掃除が苦手だから会社でもやりたくない」って考えると、会社の価値観とぶつかっちゃうんですよね。でも「これは組織人格の振る舞い」って思えば、納得できるようになる。

こうやって個人人格と組織人格を分けていいんだって発想を持つだけでめちゃくちゃ楽になります。実際、会社を辞める人の中には「合わない」んじゃなくて、“人格を分けられてない”だけのケースも多いと思ってるんです。

僕らが一番大切にしたいこと

最終的にはね、やっぱり「お客さんを最も大切にする」っていうところに行きつくんですよ。組織人格を持つっていうのは、そのために必要な手段なんです。僕としては、そこをしっかり理解してもらいたい。

組織人格として、お客さんを大事にして、ちゃんと価値を提供する。そのために清潔感を持とうとか、報連相しようとか、全部が繋がってるんですよね。

会社と合わないと感じる前に

「この会社、なんか合わないかも…」って思ったときに、それが本当に“合わない”のか、それとも“組織人格を持ててない”だけなのか。そこって大きな違いだと思うんですよね。

ちゃんと組織人格を持つって決めて、それでも合わないなら、それはもうしょうがない。だけど、そもそも人格を切り替えてなかっただけかもしれないっていう視点は、持っておいてもいいと思います。組織人格って、別に嘘をつくことじゃない。求められる役割にちゃんと応えるためのスイッチなんです。

組織人格で“道徳”を再定義する

うちでは「組織人格としてこうありたい」っていう行動基準があるんですよ。たとえば、「ちゃんと挨拶しよう」とか、「報連相はちゃんとやろう」とか。

それって個人人格で「そういうの苦手なんだよな」って思う人もいるかもしれないけど、組織人格としてならちゃんとやれる。そういう風に分けて考えることで、みんなが同じ方向を向けるようになるんです。

最後に伝えたいこと

僕は、組織人格と個人人格を分けていいっていう考え方が、働く人の救いになると思ってます。

自分のすべてを変える必要はないし、自分を否定しなくていい。ただ、「今は組織人格で振る舞うんだ」っていう切り替えがあるだけで、仕事のストレスは減るし、会社とのズレも小さくなる。

これ、もっと多くの人に知ってほしいなって思ってます。

話し手

高橋 翼

株式会社アーラリンク代表取締役社長

2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。