“誰でも”の名が誤解を生む。不正利用を許さないベンチャーの矜持

「声を大にして言いたい。『不正利用者の味方じゃない』と」

楽天モバイルの不正契約事件をきっかけに高橋さんが語る「本当の不正対策」。
支援を必要とする人たちのために悪用を防ぐ仕組みを徹底し、たとえコストがかかってもその姿勢を貫くアーラリンク。
あらためて、会社としての想いと取り組みを発信します。

就活早すぎ問題、ほんとにそれでいい?

今年は新卒6期生として8人が新しく入ってくれました。でも、実は5期生は採用できなかったんです。忙しすぎて手が回らなかったんですよね。今はもう26卒、さらには27卒まで視野に入れないといけないくらい就活のスピードが速い。

大学3年の4月からって、長すぎません?まるでフルマラソン。学生はまだ折り返し地点なのに、将来を決めろって変な話だなって思います。

不正利用対策への思い

今回ちょっと話したいのが「誰でもスマホ」の審査や不正利用対策についてです。これは僕から社会に向けて伝えたい話です。

最近ニュースで某キャリアさんが不正利用の被害を受けていて、中学生がAIを使って大量に契約してたという事件がありました。携帯電話の番号が1本いくらで売買されて、犯罪に使われていたという話です。

名前に宿る誤解と怒り

「誰でもスマホ」って名前だから「契約ゆるいんでしょ?」って思われるんですよ。実際、大人たちからそう言われるんです。

それがほんとに腹立たしくて。同じタイミングでそういう事件が起きると「お前らも甘いんじゃないの?」って思われる。そんなのめちゃくちゃ嫌じゃないですか?

だから、うちがちゃんと何やってるかをこの場で伝えたかったんです。

回線数の上限には理由がある

不正対策で一番大事だと思ってるのが、1人で契約できる回線数の上限です。最近の事件では15回線まで契約できたって話もあって、さすがにそれは緩すぎるでしょって思いました。

うちはずっと「1人1回線」だったんですけど、子どもにも持たせたいって声が多くて、今は「2回線まで」にしています。たくさん契約できる方が不正する側にとっては都合がいい。だからこそ、僕らはあえて絞ってるんです。

本人確認とその徹底

本人確認の仕組みももちろんやってます。これは法律で決まってるんで、どこもやってると思います。

でもそれだけじゃ足りない。僕らはそこに加えて、反社チェックのポリシーも導入しています。これはうちの強いこだわりです。

全契約に反社チェックしてます

うちでは、すべての契約に反社チェックをかけてます。専用のSaaSを使ってて、名前を入れると過去の新聞記事がバーッと出てくる仕組みです。

ただ名前が載ってるだけじゃ判断しなくて、地域とか年齢を照らし合わせて「この人は別人だな」とか「これはちょっと怪しいかも」っていうのを、ちゃんと見極めてます。最終的な判断も、人が責任持ってOK出してます。機械まかせじゃなく、ちゃんと目で確認してるんです。

コストと時間、それでもやる理由

この反社チェックって、ぶっちゃけめちゃくちゃコストかかるんですよ。目に見えるものじゃないし、ユーザーからも見えない。でも、僕らはやる。

なぜかって、不正利用された時に「やっぱり緩い会社だったんだね」って思われるのが一番嫌だからです。ベンチャーだからこそ、信用がすべてなんです。

SIMの再発行もガチガチにやる

契約後の管理も大切です。たとえばSIMカードの再発行。電話で「失くしたから送って」と言われても、名前・住所・連絡先が一致しないと対応しません。

しかも、送るのはその身分証に書かれた住所だけ。よくある“紛失”っていうウソ申請も、うちでは通用しません。個人情報との照合は最低限の防衛ライン。こういうところが緩いと、本当に狙われやすくなるんです。だからこそ、ここはきっちりやってます。

社内ガバナンスと信念のバランス

こういうことって売上には直接つながらないし、むしろコスパ最悪なんですけど、それでもやる理由は1つだけ。「信頼を守るため」です。

不正利用されないための仕組みを徹底しておくこと。これが僕らのガバナンスであり、社会に対する責任なんですよ。だから、売上よりこっちを優先する場面も多いです。

「誰でもスマホ」は甘くない

「誰でもスマホ」という名前のせいで、なんとなくゆるそうに見られがちなんですけど、実際は真逆です。僕らが助けたいのは“困ってる人”であって、不正を働きたい人じゃない。ここはしっかり線引きしておきたいところ。

名前に引っ張られて誤解されることもあるけど、困っている人のためになるサービスを作りたいという想いと、それに便乗して悪用しようとする人を遠ざけたいという願い。

これ、両立させるのは難しいです。でも、だからこそ仕組みとポリシーが重要なんです。名前に恥じないサービスを作り続ける。それが僕らの挑戦です。

面倒でも“全部見る”を貫く

今回の楽天さんの不正契約事件を見て、僕自身もすごくざわざわしたんです。「ああ、またうちも不正に取得されたって言われたりするかもしれないな」って。

だから僕らは、今も全件目視でチェックしてます。めちゃくちゃ手間だけど、ここだけは絶対に妥協しない。たとえ件数が増えても「自動化で効率化しよう」とは簡単に考えない。だって、その瞬間からまた“隙”が生まれる。

だから、コスパ悪くてもやる。売上を伸ばすことと、こうした審査やガバナンスって、やっぱり相反する部分があると思うんです。

利益よりも信頼を守る覚悟

でも、やっぱり「やらなきゃいけないことは、やらなきゃいけない」。その想いで僕らは動いてます。

ガバナンスと利益のバランスって難しいですけど、信頼を守ることをベースに据える。それがアーラリンクという会社のあり方だと思ってます。

話し手

高橋 翼

株式会社アーラリンク代表取締役社長

2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。