#49 きぬた歯科に学ぶ、流れる広告と残る広告。デジタルとアナログの違いを考える
デジタル広告は一瞬で流れて消える。でも看板や日常に触れるアナログ広告は、いつの間にか記憶に残っていく。Xでバズった看板事例をきっかけに、認知が“積み上がるもの”と“流れていくもの”の違いを深掘り。さらに、信頼する人からの紹介が圧倒的に強い理由や、ポッドキャストが唯一伸び続けている背景にも触れながら、これからの認知の作り方を考えていきます。
- 目次
- バズった看板広告との遭遇
- きぬた歯科・きぬたさんの一言がすべてを動かした
- 数字より大切なのは“誰に届いたか”
- デジタルの認知は“消える”
- 自分が何を買っているかを見直す
- 商品ではなく“人”を信じて選んでいる
- 友達紹介は最も購買期待値が高い
- 人間関係の中で広がる認知が最強
- 誰でもスマホのキャズムは20〜30万人
- 看板広告には“恥を捨てる覚悟”が必要
- ポッドキャストは滞在時間が“異常値”
バズった看板広告との遭遇
今回の収録は、二宮さんが「ちょっと反応を見たいネタがある」と言って始まったんです。僕はどんなネタか全然知らなかったので、正直ワクワクしてました。
ネタというのが“Xで342万インプレッションを超えた看板広告の投稿”なんです。岐阜県にあるアスベスト除去会社が看板を設置した投稿で、一見すると普通の宣伝なんですけど、そこに思わぬ影響力が働いて大バズりしたんですよね。
きぬた歯科・きぬたさんの一言がすべてを動かした
バズった理由は、きぬた歯科のきぬたさんが引用リツイートで全力で添削したことなんです。「人と環境の架け橋がすべてを台無しにしています」という、あまりにも鋭い指摘。
看板の一番大きい文字が“キャッチコピー”になっていて、本当に伝えたい「アスベスト除去・解体工事」が小さい。きぬたさんは、それを一瞬で見抜いて改善案を提示していたんですよね。そこからレイアウト大会のように、次々と一般の人が改善例を投稿する流れが生まれて、“広告添削”という文化が一気に可視化された瞬間でした。
数字より大切なのは“誰に届いたか”
僕がこの件で強く思ったのは、認知には“購買期待値の高い認知”と“低い認知”があるということです。Xで540万インプレッション出ても、岐阜県のアスベスト除去会社が本当に届けたい相手は“岐阜でアスベストに困っている人”ですよね。
そこにリーチできてないなら数字だけ大きくても意味がない。アナログの体験がセットの方が認知としては深まりやすいんですよね。
デジタルの認知は“消える”
XやSNSのバズは、一瞬忘れてしまうんですよね。翌日には誰も覚えてなくて、人間の記憶に残る前に、どんどん新しい情報が流れてきて上書きされる。だから、デジタルだけで“覚えてもらうこと”を狙うってすごく難しい。
逆に、アナログの看板って本当に強くて、同じ場所にあり続けるので、意識してなくても自然と目に入る。これが“フローじゃなくてストックの認知”。今のデジタルでは作りにくい形の記憶だと思っています。
自分が何を買っているかを見直す
広告の話をしている中で、僕自身が最近思ったのが「そもそも自分は何を買ったんだっけ?」ということでした。考えてみたら、物をほとんど買っていない。
唯一買ったのが、孫さんについて書かれた本。でもそれも、“読みたかったから”じゃなくて“フライヤー社長の大賀さんが薦めてくれたから”なんですよ。信頼している人が薦めた瞬間に行動が変わったんですよね。
商品ではなく“人”を信じて選んでいる
僕が使っているマイクもそうです。二宮さんが「これいいですよ」と言ってくれたから買いました。もし二宮さんと出会っていなければ、このマイクに出会うこともなかったし、必要性を感じることもなかった。
僕自身の購買行動を分析した結果、“人からの推薦がすべてを左右している”と思っていて。これは僕だけでなく、今の時代の消費行動の本質だと思っているんですよね。
友達紹介は最も購買期待値が高い
この構造を理解したうえで、今アーラリンクで準備しているのが“LINEの友達紹介キャンペーン”です。抽選に参加するために友達に送る仕組みで、当たると誰でもスマホのオリジナルカップラーメンが届くんです。
カップラーメンを一日で食べきれないので、残るだけで認知が続く。広告より強いくらいの“生活感のある体験”が作れると思っているんですよね。
人間関係の中で広がる認知が最強
「6人たどれば誰とでも繋がる」という話がありますよね。僕はあれが本当に好きで、友達紹介ってその仕組みとほぼ同じなんですよ。距離の近い人同士の紹介はスパムにならないし、信頼関係の中で広がる。浅い認知より圧倒的に強いんです。
しかも、友達紹介の延長線上には“爆発的な認知の広がり”も存在していて、これが最も合理的だと感じています。
誰でもスマホのキャズムは20〜30万人
誰でもスマホは今7万人ほどなんですが、僕はキャズムが20〜30万人にあると思っています。
この壁を越えられた瞬間、広がり方が明らかに変わる。だからこそ、今は“やれることを全部やるフェーズ”。LINE、ノベルティ、広告、SNS、口コミ。手を止めずに動き続けるしかないと思っています。
看板広告には“恥を捨てる覚悟”が必要
看板をやるなら、顔を大きく出すのが良いそうです。正直、自分の顔を看板に出すのは抵抗ないです。僕が広告に出まくる日もそう遠くないかもしれません。
来年の今頃は、高橋さんの広告についてラジオでいじられている話が出来ればいいですね。「広告が出すぎて僕の顔がフリー素材になっている」とか。
ポッドキャストは滞在時間が“異常値”
データを知って思ったんですけど、ポッドキャストって“異常なメディア”なんですよ。SNSは滞在時間が落ちてるのに、ポッドキャストだけ伸びている。TikTok広告の15秒ですら、最後まで見てもらえるのは1.5%の時代なんですよ。しかも、業界平均の3倍と言われていて、“15秒も持たない世界”なんですよね。
そんな中で、毎週30分、1時間と当たり前のように聞いてもらえる。「その人の話だから聞きに行く」他とは構造がまったく違うんです。音声って距離が近いから好きになりやすい。感情がそのまま伝わるので、SNSの短い投稿や動画では絶対に生まれない“関係性の深さ”が自然に積み上がっていく。
ポッドキャストは今の時代において本当に異質で、圧倒的に強いメディアだと思っています。
話し手
高橋 翼
株式会社アーラリンク代表取締役社長
2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。

