人事制度を変える|アーラリンク大学構想
「とにかく『総合力』を身につけるためのカリキュラムにしていくっていう構想です」
「人間力=総合力」を軸に、採用・育成・評価すべてを学びの仕組みに変える新制度について語ります。課題図書を通じて単位を取得し、メンターレベルや報酬と連動。内定者も先輩も一緒に学び合い、競い合いながら成長できる。次代のリーダーを育てるために、文化と歴史を育てる“もうひとつの大学”について考えてみました。
- 目次
- 社内に“大学”をつくる理由
- 教えるのは“本”でいいじゃん
- メンターレベル制度との連動
- 面接は見極めじゃなくて“口説き”の場
- 内定者にも“アーラリンク大学”
- 競争が成長を生む仕組み
- 大学生が通う、もう一つの“大学”
- 会社のブランドにもなるアーラリンク大学
- 文化と歴史をつくる学びの“レール”
- 次のフェーズはマネージャー研修
- 学びが報酬にもつながる仕組み
- ただの制度導入ではないことを伝えたい
社内に“大学”をつくる理由
今回は、いきなり結論から言うと「アーラリンク大学」っていう社内大学を作ろうとしてるんです。
実際に大学の校舎を建てるとかそういう話じゃないです。あくまで「社内研修制度」のことを、便宜上「大学」って呼んでるだけです。
なんでアーラリンク大学を作ろうと思ったのかって話なんですけど。
まず1つ目が、「採用」と「メンター制度」に関して、僕が強く感じたことがあって。
採用力とか育成力って、もっとちゃんと磨かなきゃいけないなって思ったんです。
でも、それって簡単じゃないんですよ。採用も、ワンオンワンの面談も、結局は「人間力」勝負なんです。
人間力って、もう総合的な能力なので、何か1つだけ学んだら身につくものじゃない。
だから「これはもう意思決定しないと一生やらない」と思って、やるって決めたんですよ。
そこから、「アーラリンク大学」って名称にして、じゃあ何を学んでほしいのか?っていうのをリストアップしたんです。
例えば『社会人としてのスタンス』『社会人マナーの基礎』『仕事への価値観や考え方』『自己肯定感』『自己効力感』『コミュニケーション力』『ロジカルシンキング』『問題解決力』『マーケティングやデータベースの基礎理解』
とにかく「総合力」を身につけるための内容を、大カテゴリーで並べて、それぞれをちゃんと習得できるようなカリキュラムにしていくという構想です。
「習得する」ってなると、ちょっと大学っぽいから「アーラリンク大学」って呼ぼうってなったんです。
教えるのは“本”でいいじゃん
全部の講義を僕らが作って教えるのが理想としてはいいかもしれないですけど、現実的にそれは無理だなと思いまして。
だから、もう課題図書でいいと。他の人が既に良い本を書いてくれてるので、その力を借りようと考えました。
具体的には、課題図書を選んで読んでもらう。
その上で、読書ワークをやってもらって、評価者が「合格」と判断したら、その単位が取れるみたいな仕組みにするんです。
これを積み上げていくことで、例えば「100単位」ぐらい取ったら、リーダー層に必要な総合力が身につく、というイメージですね。
メンターレベル制度との連動
このアーラリンク大学、実は人事制度ともがっつり紐づけていこうとしていて、「メンターレベル1〜4」みたいな区分を用意してます。
例えば、『レベル1:中途入社者のフォローができる』
『レベル2:一次面接官になれる、ワンオンワン面談ができる』
『レベル3:新卒のメンターができる』
『レベル4:アーラリンク大学の講師になれる』
という感じで、メンターレベルごとに「できること」が定義されてるんです。
その各レベルになるために必要な単位数とか、模擬面談やフィードバックの試験をクリアする必要があるようにしてるんです。
評価も面談も総合力がないと意味がなくて、逆に言うとメンターレベル2の人じゃないと、ワンオンワンとか評価面談とかの仕事は任せられないっていうようにするつもりなんです。
評価面談の質とか、ワンオンワンの質って、僕からすると正直ちょっと問題あるんじゃないかなと思っていて。
それを改善するのって、単に「ワンオンワンのやり方」を勉強すればいいってものじゃなく。ワンオンワンって、結局は総合能力なんです。
だから、総合力が上がらないと、ワンオンワンの質も上がらないんです。
面接は見極めじゃなくて“口説き”の場
これは面接にも言える話で。みんな面接って「見極め」だと思っちゃってるんですけど、面接で一番大事なのって“口説き”なんですよ。
人間が人間を口説くって、もう完全に総合能力の塊なんです。
どんなに面接のスキル磨いても、肝心の人間力が伴ってなかったら口説けないし、その場をリードできない。
だから、いわゆる“いい人”を採用の現場に出すっていうのは当然で、そのためにはアーラリンク大学の学びとリンクしてる必要があるんですよ。
もっと言えば、その人たちって「アンバサダー」だと思っていて。アーラリンクを体現する人。
単にスキルがあるだけじゃなくて、アーラリンクの価値観やスタンスをちゃんと理解してる人じゃないと、そういう役割は任せられないです。
内定者にも“アーラリンク大学”
新卒内定者が結構いるんです。今だと26卒の子たちですね。
その子たちにもアーラリンク大学を活用できるなって思っていて。
内定者バイトとかを通じて、アーラリンクのことをちゃんと理解してもらうために、アーラリンク大学を組み込めるんですよ。
例えば、遠方にいて実際のオフィスに来られない人でも、アーラリンク大学の単位をどんどん取っていけば、知識や考え方が身についていくし、成長意欲の高い子たちにとってはすごくいい機会になるんですよ。
そうすると、入社のタイミングが来年の4月1日に入社した時点で、すでに30単位くらい取ってるとか、バイトで現場経験も積んでて、もうすでに喋れるようになってるとか。
そしたら、もうその時点でリーダー任せられるかもしれないじゃないですか。
競争が成長を生む仕組み
同期の中でも成長の早い人と遅い人が出てきて、「負けたくない」っていう気持ちが出てくると思うんです。
そういう意味でも、このアーラリンク大学って、すごく良いモチベーションになると思うんです。
逆に、学生のうちから頑張ってる子たちに、社会人の先輩たちが置いてかれてはダメだと思ってほしいんです。
内定者が頑張って単位取ってるのに、現場の先輩たちが何もしてなかったら、それってまずいじゃないですか。
もちろん、試験もあるので、ちゃんと勉強しなきゃ単位は取れないです。
でも、その「勉強しよう」っていう意欲があるかないかで、成長のスピードって決まってくると思うんです。
だから、このアーラリンク大学って、内定者の育成や、入社前の教育にもすごくフィットすると思ってます。
大学生が通う、もう一つの“大学”
新卒にフィットする制度としても、この「アーラリンク大学」ってすごく合ってると思ってます。
大学生が、自分の大学とは別にアーラリンク大学にも通ってる、みたいな感じになるじゃないですか。
「自分の大学 + アーラリンク大学」って感じで、すごく意味のある“もう一つの大学”になってる。
社会に出る前の準備として、すごく価値のある環境だと思うんです。
今までのアーラリンクって、実践ベースはあったんですけど、そういう「総合力を系統立てて教える」っていうことができてなかったんです。
それができてなかったことによって、例えばワンオンワンの質とか、採用のフロントマンのレベルとかに、ちょっとずつ影響が出始めてるなっていう感覚があって。
だからこそ今、「もっとちゃんと総合力を上げていくカリキュラムを、会社として持たないとダメだな」って思い始めてるんです。
会社のブランドにもなるアーラリンク大学
このアーラリンク大学って、社員だけじゃなくて、会社の外にも意味があると思ってて。
「アーラリンク大学ではこういうことを学べます」っていうのが明確に見えると、それ自体が会社の採用ブランディングにもつながると思うんです。
もちろん、採用にも有利に働くと思うし、うちのようなソーシャルベンチャーにとっては、信頼性にも直結する。
カリキュラムとしても、ほんとに「火力」っていうか、エネルギーのある内容にしていきたいんです。
文化と歴史をつくる学びの“レール”
新卒採用って毎年くるんですよ。しかも「○○期生」っていう文化が年々積み重なっていく。
例えば「1年目は大体何単位くらい取ってたらいい」「2年目になったらこれくらいはクリアしてほしい」っていう、目安みたいなものが必要になる。
それを3年、4年やっていけば、育成の軌道とかデータも溜まってくるし、会社の文化としても蓄積されていくんです。
「この会社はちゃんと育てる会社なんだ」っていう文化と歴史を、アーラリンク大学を通じて作っていく。
これ、めちゃくちゃ重要だと思ってます。
次のフェーズはマネージャー研修
さらにその上のフェーズの話もあります。
今の構想では、アーラリンク大学のその次、「第3層」としてマネージャーを育てるっていう段階を用意しています。つまり、マネージャー研修です。
クリティカルシンキングをどう磨くか、AIを活用した仕事の仕方を身につけるとか。
そういう内容を含めて、次のステージに必要な力を育てていこうっていうフェーズに入ってるんです。
それを今、作ってもらっていて、構想としてはもう始まってるんです。
最終目標は“経営者”育成
さらにその上があって、そこはもう「経営者育成」のフェーズです。
ここは最終段階です。
今のところは僕や経営層のメンバーでやってますけど、すでに着手は始まってます。
課題図書を選定して、それを読んで、2週間に1回くらいブックリーディングをやっていく、っていうのはもうすでにスタートしていて。
最後は「経営を教える」っていうところまで、カリキュラムが一本にビシッとつながっていくイメージです。
こうやって、育成を仕組み化していくっていうのは、会社として本当に重要だと思ってます。
学びが報酬にもつながる仕組み
もう1つ考えてるのが、このアーラリンク大学の単位と「報酬」を紐づけることです。
まだ確定じゃないですけど、さっき話した「メンターレベル1〜4」っていう制度。
あれって、「ワンオンワンができる」「新卒のリクルーターができる」みたいなレベル感があるんですけど、そこに対して報酬の設定をしていこうかなと思ってるんです。
「この人はメンターレベル2で、一定の総合力を持っている」とか、「面接できるスキルがある」とか、ちゃんと評価されて報酬にも反映される、そういう人事制度にしていきたいなと思ってるんですよ。
やっぱり努力した人に報いたいじゃないですか。
学んだ人、成長した人がちゃんと評価される会社でありたいなと思っていて。
ただの制度導入ではないことを伝えたい
僕のこの話もそうですし、社員代表として話してくれる人たちの言葉も、ちゃんと届くといいなと思ってます。
アーラリンク大学って、ただ制度を導入するっていう話じゃなくて、組織の分水嶺だってことを、みんなに伝えたいです。

話し手
高橋 翼
株式会社アーラリンク代表取締役社長
2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。