一次情報を取る力が組織を変える

「一次情報を知ることが大切です」

人事も育成も、二次情報にはバイアスがあるからこそ、一次情報からが重要だということ。
一次情報の共有によって、自分自身を知るきっかけになったり、社員同士が座談会やアンケートを通じて情報を共有したりすることができます。こうしたコミュニケーションの積み重ねによって生まれる社員の可能性などについて話します。

見えてなかった可能性を、ちゃんと見にいく会社にしたい

今、会社として一番大事にしているのが「社員一人ひとりの可能性をちゃんと見に行こう」という姿勢です。
当たり前のようで、意外と出来ていないことだと思います。

ある時、事業部長クラスのメンバーと話していて「このポジション、誰に任せようか?」という話になったんですが、名前が出てこなかったんです。「適任者がいないね」と。

でも本当にいないのかというと、そうじゃない。たぶん“知らない”だけ。関わったことがないから、任せることができない。そういう構造になってることに気づかされました。

人事も事業責任者も、情報は「取りに行く」もの

これまでは、人事チームがヒアリングをして「この人はこういう強みがある」「こういう仕事にやりがいを感じている」という情報をまとめて、それをもとに配属を決めていました。

でも、その情報って結局“二次情報”なんですよね。人から聞いた話だけを頼りに、重要な意思決定をしていた。それって、今思えばすごく無責任だったと思っています。

だからこそ、今は「一次情報を自分たちで取りに行く」という方針に変えました。人事も、事業部長も、責任者も、全員がその姿勢で動いていきます。

お客さん対応と同じ姿勢で、社員にも向き合う

僕は昔から、お客さんと向き合うときも必ず「自分で直接話す」という姿勢を大切にしてきました。サービスを変えるとき、新しい施策を考えるとき、必ず自分で電話して、お客さんの声を聞いてきました。

だからこそ、社員のことを判断する時も、同じように「誰かから聞いた話」ではなく、自分の目と耳で確かめることが必要だと思ったんです。

社員の未来を左右する人事判断において、他人任せの情報で決めるわけにはいかないんです

50人の会社で「知らない」は、ただの甘え

アーラリンクの社員数は50人くらいです。それなのに「全員を把握するのは難しい」という言葉を使っていたら、それはただの甘えだと思います。

リクルートの江副さんは2000人の社員の名前と顔を一致させていたと聞いて「それなら僕らもやらなきゃ」と思いました。

僕たちの仕事は「人の可能性を見つけて、正しいポジションに置くこと」なんです。
知らないこと自体が問題なのではなく「知ろうとする努力をしないこと」が問題なんだと思っています。

「知らない」は、今のアーラリンクではサボタージュ

今、アーラリンクでは「3ヶ月に1回は抜擢対象の社員と直接話す」というルールを設けました。1on1じゃなくても、座談会でも構いません。
とにかく会って話す。それが基本です。

「この人のこと知りません」は、今のアーラリンクでは通用しません「ちゃんと話した?」と問われる空気があります。

もちろん、これは僕自身にも向けられた視線です。人を知らない状態で「適任者がいない」と判断するのは、単なる思考停止だと僕は思っています。

「この人に任せよう」と思えるかは、話した回数で決まる

「この人、たぶん伸びるな」と思える瞬間って、やっぱり会話の中から出てくるんですよね。
履歴書や他人の評価じゃなくて、自分が会って、話して、感じた匂いみたいなもの。

それが判断の根拠になります。だから今は、週に1.5時間、月に6時間を「一時情報を取りに行く時間」として確保しています。

けっこう大変だけど、その時間で何を聞くか、どう話すかが会社の未来に直結すると思っています。

「聞く力」を鍛えるために、僕もコーチングを学んでる

最近、毎週木曜日の夜にコーチングの勉強を始めました。知り合いの社長が「コーチングを学んだことで、話の聞き方が劇的に変わった」と話していて、僕も気になって受けてみたんですけど、これが本当に難しい。

僕はこれまでずっと“話す側”だったから、聞くということに自信がありませんでした。社員と話していても、つい「こうすれば?」とアドバイスをしたくなる。

でもコーチングは、答えを出すことじゃなくて、問いを深めること。それを今、学び直しています。

経営者は「語る」だけじゃダメ「聞く」力も必要になる

経営者って、ビジョンを語る仕事だと思っていました。実際、今まではずっとそうしてきました。

でも最近「聞く力がないと会社に厚みが出ないな」と感じるようになってきました。
語るだけじゃ片手落ちで、聞ける人にならないと社員の本音にはたどり着けない。

聞くことで初めて「今、本当に必要なこと」が見えてくる。
これは経営の中でも、とても重要な要素だと改めて実感しています。

この取り組みは、僕たち全員のためにやっている

この一連の取り組みは、社員のためでもあるし、会社のためでもある。そして何より、僕たち全員にとってプラスになると思っています。

社員が自分の得意・不得意を言語化し、それを共有することによって、適材適所が進みやすくなる。抜擢の判断もスムーズになるし、本人もより納得感を持って仕事に取り組める。

だからこそ、アンケートを取ったり、雑談をしたり、対話の機会を意識的に増やしていっています。

抜擢は「信じられる」から始まる

人を抜擢する時に一番大事なのって「信じられるかどうか」だと思ってます。実績だけじゃなくて「この人ならやってくれそうだな」っていう直感的な信頼。

それって、日々の会話の中からしか生まれないんですよね。社員と話す中で「こういう考えを持ってるんだ」「この方向に興味があるんだ」と知っていくことで、その人に合った仕事が自然と見えてくる。

キャリアは一方的に決めるものではなくて、一緒につくっていくものだと思っています。

「知る」ことがすべての始まり

どんなに立派な制度をつくっても、人のことを知らなかったら意味がないと思っています。どんな仕事を任せるにしても、まずは「その人を知ること」がスタートラインなんです。

だから、ちゃんと話したいし、話を聞きたい。得意なこと、苦手なこと、大事にしてる価値観。なんでもいいから、まずは言葉にしてもらいたい。

それが、本人のキャリアを広げていく第一歩になるし、僕たちにとっても大切な判断材料になります。

「知らないこと」を放置しない文化へ

昔は社員の人数が少なかったから「なんとなく全員のことは分かってる」っていう状態だったんです。
でも今はもう、それだけじゃ足りないフェーズに来ています。僕以外にも人事に関わるメンバーが増えてきたし、それぞれの立場で「知る努力」をしなきゃいけないタイミングなんだと思います。

このまま人が増えていって、100人、150人になったときに「もうさすがに全員は把握できないよね」って空気ができてしまったら、それは組織の質が下がるサインだと思うんですよね。だからこそ、今のうちから意識的に「知る文化」「聞く文化」を育てていきたいんです。

社員のことを「知らない」で済ませるんじゃなくて「知らないままでいることが問題」という感覚を持つこと。それって、会社の根っこを強くするためのすごく大事な投資だと思っています。

話し手

高橋 翼

株式会社アーラリンク代表取締役社長

2011年早稲田大学社会科学部卒業。通信事業の将来性と貧困救済の必要性を感じ2013年にアーラリンクを創業。